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薬剤師の善意は届かない

 仕事の話。

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 近所のスーパーのお客様の声に、下記のようなご意見があった。

この店の薬剤師は何を考えているんだ。売って欲しいと言った薬を
 売ってくれなかった。薬剤師は薬を売るのが仕事ではないのか?
 いったい、どういう教育をしているのか
?」

 この店は薬剤師がいて、医薬品の販売もしているようだ。
(上記の意見は、100%正確なものではないが、
 趣旨としてはそういうものだった)

 これに対する店長の返答は・・・覚えていないが、
当たり障りのないお詫びの言葉だったように思う。
ここでは割愛する。

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 実際のところ、これだけでは状況が判らない。
お客様がどういう状態で、何を買おうとしていたのかは分からないし。
単なる、態度の悪い薬剤師であった可能性は否定できない。

 しかし、同業者なら理解できる。この薬剤師は、悪意があって
売らなかったわけではなく、むしろ逆である、と。
お客様の身体を思えばこそ、あえて売らなかった可能性が高い。

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「薬剤師は薬を売るのが仕事ではないのか?」
という問いに対しては、これはもう、即答できる。

 断じて、違う、と。

薬剤師の仕事は、お客様が健康になるための手助けをすることだ。
薬を売ることは、その手段の一つに過ぎない。

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 どういったことかというと、例えば、胃が痛い人が、
「痛みを抑えるために、痛み止め!」とロキソニンS(鎮痛剤)を
買いに来たとする。

 これでロキソニンSを売る薬剤師がいれば、
それはもう、薬剤師免許を返した方がいいだろう。

 鎮痛剤は、(通常)胃痛に対しては使えない。
むしろ、逆効果になってしまうだろう。
このように、お客様が間違った知識で薬を買おうとした場合は、
必ず止めなければならない。

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 そんなケースはさすがに少ないけれども。

 例えば、胃酸を抑える薬であるガスター10.
3箱くらいまとめ買いされて「毎日のみ続けてます」みたいな例は?
これも、売るべきではない。

 病院を受診しろ、と。受診を勧めるのが正解だ。
ひょっとしたら、ただの胃痛ではなく大きな病気が隠れている可能性がある。

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 一番よくあるパターンでは、口唇ヘルペスの塗り薬かな。
この薬は、一回も病院でヘルペスの診断を受けたことのない人には
売れない。あくまで「ヘルペスの再発」にしか使えないので。

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 むしろ、何も考えずに薬を売る方がはるかに楽
でも、それは薬剤師としてやってはいけないことだ。

以前、ネット販売と対面販売の差として、
「売らない」という選択肢を示すことができるか、と書いた。

「対面販売の利点」(2013.3.15)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-bd17.html

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 ただね・・・それがお客さんに伝わるかどうかは別問題。(苦笑)
このスーパーの薬剤師さんはちゃんと仕事をしているが、
その「お客様の健康を案じています」という善意、気持ちは、
お客様には伝わっていなかったらしい。

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 もちろん、薬剤師としての仕事はしっかりとこなす必要があるが、
接客の仕事でもあるんだから、お客さんとのコミュニケーションを
しっかりと取る必要があるわな。
お客さんから見れば、売って欲しい薬を売ってくれないわけだから、
利害が対立している(と感じる)訳で。
この辺、非常に難しいなぁ・・・。

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 「ドラッグストアとジャーナリズム」のkurieditsさんが、
同じテーマで見事な記事を書かれているので、そちらも見て欲しい。

「あなたには薬を売れませんよ?ドラッグストアの売らない力」
http://drugstore.hatenablog.com/entry/2015/04/08/193500

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 薬を売らない薬剤師は、ちゃんと仕事している。
いい薬剤師である可能性が高いんだけど・・・
あとは、それが相手に伝わればもっといいけんだけどね。

 

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('14~16)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

紹介していただきありがとうございますヽ(´▽`)/

投稿: kuriedits | 2015-04-10 13:58

>kurieditsさん
 便乗?させてもらいました。
このネタ書こうかなって思ってたところで、
いい記事を書いていただいたので、かぶせてみよう、と。
 相手のことを思っていても、伝わらなきゃ意味ないですね。
そして、薬剤師は伝えるの下手な人多いです。(苦笑)

投稿: kitten | 2015-04-12 23:09

ありがとうございます。便乗?して、紹介させていただきました。http://drugstore.hatenablog.com/entry/2015/04/13/170000

投稿: kuriedits | 2015-04-13 21:37

健康に短期的なものと長期的なものがあるとして、薬剤師が勝手に長期的な健康をおもんばかってパターナリズム発動して、患者の短期的な健康(いますぐ不眠をなおしたいとか)を損なうなら、薬剤師は患者の敵だ。長期的な健康が常に正しいと証明してみるよこの薬剤師ゴロ

投稿: 名無し | 2018-05-24 16:02

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