「過剰診断」
先月から読んでいた本。
「過剰診断」-健康診断があなたを病気にする-
例によって、上記リンクはアマゾン。
.
過剰診断とは何か?この著者は、
「決して症状が出たり、そのために死んだりしない人を、
病気であると診断すること」と定義している。
早期発見、早期治療が、必ずしもよいとは限らない。
なぜなら、治療しなくても問題のない病気であれば、
仮に治療しなかったとしても結果は変わらない。
過剰診断であれば、これらの治療のメリットは全くない。
一方、デメリットとして、診断を受けることによるストレス。
(不要な)手術による後遺症や、薬物療法による副作用。
また、単純に医療費がかかる、といったデメリットがある。
早期発見しても死亡者数が減らないような(過剰診断のリスクの高い)病気は、
早期発見することによるデメリットの方が大きいのではないか?
とそういう話である。
.
natrom先生が、過剰診断について記事を上げているのでリンクしておく。
「過剰診断とは何か」
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150324#p1
ここで書かれている「過剰診断」は、この本に書かれている過剰診断と同じである。
natrom先生は、アマゾンにもこの本の書評を書いているので、当然、この本を
読んでいて、該当記事を書いていると思われる。
(この本「だけ」ではないだろうけど)
ってことで、natrom先生の記事を読んでもらえれば、
ぶっちゃけこの記事は必要なくなるんだが。(苦笑)
.
私の感想。かなり打ちのめされた。
早期発見、早期治療こそ最善、とは必ずしも言えない、ってことか……。
確かに、前立腺がんは治療しなくても何も起きないこともあるし、
乳がん検診は、偽陽性の問題(乳がんじゃないのに、乳がんの疑いがかかる)が
あるのは知っていたが、それでも早期発見のメリットはあると思っていたが、
そもそもメリットがある、という証拠が薄い、と。
みんなが、「早期診断がよいに決まってる」と信じてしまっている結果として、
客観的に早期診断が評価されることが少ない、ってことか。
.
ただ、これは非常に難しい問題だ。
医師が診断する時点では、それが「過剰診断か」どうかは分からない。
後になって、(それも多くの人を追いかけた結果として)過剰診断が疑われる。
例えば、100人のがん患者のうち、99人が過剰診断だとしても、
自分が「残り1人でない」という保証はないんだ。
あくまで確率でしか評価できない。
全体としては、過剰診断の多い分野のスクリーニングは控えたほうがよい、
と言えるかも知れないが、その結果、何人か「救えたはずの命」が消えることになる。
その数人に自分が入る可能性を考えると、やっぱり早期診断したくなってくる。
.
著者は、早期発見全てを否定している訳ではない。
ランダム化比較試験等で、効果の実証されている早期発見、早期診断であれば
問題ない、としている。
ただ、今のところ効果の実証されているスクリーニングが非常に少ない、
というだけで。これは、それらの早期診断が「効果がない」と分かっている訳では
ない。(いや、分かっているものもあるが)
「効果がわからない」のに、早期診断されている、というのが正しい。
なので今後は、早期診断、早期治療の効果を、疑ってかかり、
ちゃんとランダム化比較試験を行って効果を実証することが必要になるだろう。
で、試験の結果、効果がないと分かった早期診断は、止めたほうがいいんだろうな。
.
ここ数年で一番、衝撃を受けた本だった。
日本語訳の発売は昨年の12月で、まだ半年も経っていないんだけど、
実は……私はこの本を買っていない。
市立図書館で目についたから借りただけ。図書館グッジョブ。ww
いや、内容を最初から知っていたら、自分で買ったかも知れないけど、
先に図書館で借りてしまった本を買う気にはなれないなぁ。
という訳で、図書館で見つけられなかった人は、
ぜひ購入してください。
.
ちなみに、前に紹介した「絵でわかる感染症withもやしもん」も、
図書館で見つけてしまったが……。買ってしまったことを後悔はしていない。
支払った金額に見合う価値はあったから、問題ないさ。
(先に図書館で見つけてたら……たぶん、買ってないと思うが。)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 読書記録 2025.2(2025.03.08)
- 読書記録 2025.1(2025.02.02)
- 2024年読書まとめ(2025.01.03)
- 読書記録 2024.12(2025.01.01)
- 2024年おすすめランキングTop20(2024.12.30)
コメント