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機能性表示食品を評価してみる(その2)

 短期集中連載になりつつあるなぁ。(苦笑)
昨日の記事では、実際の論文の検証をすっぽかした。
でないと、やってられない、という判断の元で。

 では、そこをさらに頑張ってやってみればどうなるのか?
さすがに、有料の論文を読むのはハードルが高すぎる。
そこで、レビューに上げられた論文の中から、無料のものを探して読んでみる、
という作業をやってみることにした。

.

 結論から言うと、これやると30分では絶対に終わらない。
どうやっても1時間以上はかかってしまうんだけど、
まぁ、それだけ面白い情報が拾える。

 今回、評価するのは、「難消化性デキストリン」について。
これも、私の得意分野である。トクホで出てた当時にそこそこ調べている。

 今回は、キリンビバレッジの「食事の生茶」を評価する。
この食品には難消化性デキストリンが含まれている。

(注意! 今回評価するのは、「難消化性デキストリン」と、
 キリンビバレッジさんの資料についてであり、
 最終製品である「食事の生茶」についてではありません。)

.

 キリンさんが提出した機能性の科学的根拠の資料。

http://www.caa.go.jp/foods/pdf/A2-kinou.pdf

以下、表示予定の機能性を一部引用

「難消化性デキストリンは、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて
 排出を増加させると共に、糖の吸収をおだやかにするため、食後の
 血中中性脂肪や血糖値の上昇をおだやかにすることが報告されてい
 ます。さらに、おなかの調子を整えることも報告されています。」

.

 さて、機能性は3つ示されている。
脂肪の吸収を穏やかにする。糖の吸収をおだやかにする。
おなかの調子を整える。の3つ。

 最初に私の感想だが、「資料多すぎ」
これ、別に論文が添付されている訳ではないよ?
難消化性デキストリンに関する、システマティックレビューで、
論文リストとか、それぞれの論文の評価とかのデータなんだが、
これ、全部で100ページあるんですけど。。ww

.

 すでにこの時点で、萎えそうになってくる。
気を取り直して、やってみよう。

 まず、機能性3つのうち、今回検証するのは1つ目、脂肪だけにする。
というのは、糖の吸収、おなかの調子の方は、割としっかりしたエビデンス
があることを知っているからだ。

 今回も基本として、「健康食品の安全性、有効性情報」をチェックする。
「デキストリン」の項を確認してみたところ、
少なくとも、糖の吸収やおなかに関しては、肯定的な記述があった。
(更なる検証が必要、とは書いてあったが。)
 でも、脂肪に関しては何も書かれていない。
個人的な感覚としても、怪しいとすれば脂肪だ、と思ったので、
キリンさんの資料のうち、脂肪の部分だけをチェックする。
それでも27ページあるんだが。(苦笑)

.

 さすがに、トクホがたくさんでている成分だけあって、論文も多い。
中性脂肪上昇の抑制だけで、実に14本もありやがる。
14本中11本が、「薬理と治療」という雑誌のものになるんだが・・・

 この雑誌、アブストラクトすら有料である。読めない。

.

 残った3本のうち、「日本食品化学学会誌」がフルで読めたので、
それだけを確認してみた。
直接、リンクはっておく。

http://ci.nii.ac.jp/els/110007361211.pdf?id=ART0009221927&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1435070746&cp=

.

 このデータは、なかなかツッコミどころ満載で面白かった。w

 結論だけ先に書いておく。難消化性デキストリンは、
「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」と言う分には問題ないだろう。

 ただ、以前も書いたことあるんだけど、それって臨床的に意味あるの?と。
血糖値に関していうならば、食後過血糖の状態がよくない事は分かっている。
でも、中性脂肪は、急激に上がるのってよくないの?
 おだやかにするって、結局は「おだやかに上がる」ってことなんだが。w

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 面白かったのは、長期摂取安全性試験のデータ。
被験飲料が8人、対照飲料が10人なんだけど・・・。

        体重(0W)
被験飲料  69.4 ± 12.7
対照飲料    60.2 ±  8.9

 いや、これ、0W(0週。実験始める前)の時点で有意差あるでしょ。ww
本当にランダムに選んだのか、問い詰めたい。

ちなみに、被験者の体重は、この後14Wまで、ほぼ動かない。
被験者と対照者で有意差がでたのはBMIのみで、しかも対照者が有意に低い。w

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 じゃぁ、コレステロールやら中性脂肪はどうなの?このデータも書いてある。
「食後6時間」では有意差があったんだが・・・
12週間続けても、有意差は全くない。予想通りだな。

 この論文では、長期試験はあくまで「安全性確認」のために実施しているので、
この結果について、結論では触れていない。
ただ、長期的な安全性は確認された、としか書かれていない。
いや、長期的に全く効果のないことも確認できるんだが。w

.

 では、キリンさんはこの論文をどう評価しているんだろう?
論文は、QL1.質が高いと評価されている。
また、全14本の論文で、ほぼ一貫して「食後血中脂肪の抑制」は認められている。

.

 さて、まとめよう。

キリンビバレッジさんの「食事の生茶」
「機能性表示食品」の提出資料の評価は、これはもう全く問題ないだろう。
さすがはキリン、と賞賛してもいいんじゃないだろうか。
(あくまで、「提出資料」はね。)

 で、私が確認した論文もね、全体として問題はないと言えると思う。
この論文、あくまで評価しようとしたのは、
「血中中性脂肪の上昇をおだやかにするかどうか」だからね。
その部分のデータは人数もかなり多かったし、体重が明らかに違うこともなかった。

 私がツッコミを入れたのは、あくまで「安全性」を確認する試験だし、
人数も少なかったからまぁ、あれくらいのゆらぎはあっても仕方ないのかも。
あのデータみる限り、長期的に効果がないようにしか見えないけれども。w

 つまり、提出資料もA評価。論文(一つだけだが)もA評価でいいんじゃないか。
商品としての評価も、それほど悪くはない。
今回はチェックしてないけど、血糖やおなかの調子に関してはそれなりの根拠あるし。
中性脂肪も、長期的には効き目が見えないけれども、吸収を「おだやかにする」ことに
私の知らないメリットがあるのかも知れない。(苦笑)

.

 さて、今回の作業だけれども、これだけ手を抜いても軽く1時間以上かかった。
キリンさんが資料をしっかり作っていたから、というのもあるかも知れないが。
もっと杜撰な資料なら、もっと早く終わったか?
いや、突っ込みどころが多すぎて、もっと時間がかかったかも。

 ただ、やってみて分かったのは、昨日の最初の意見とは違うんだけど、
これ、論文1本を検証する方が、楽だわ。w
文献レビューから検証すると、そもそも元論文にたどりつくのに時間かかるし、
たどりつけない可能性もあるし。
 まぁ、論文が英語となると、話は全然違うのかも知れないが。

.

 さて、この短期集中連載は、明日も続く。
一応、明日で一区切りつける予定。

実際に二本やってみた感想と、薬剤師が評価するための課題。
あとは、今後どうしていけばよいか……。
その辺を書いてみたいと思う。
 思ってるだけで、下書き原稿は真っ白だが。w

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コメント

またまたコメント失礼します!
非常に参考になりました!

私も読んでて思うんですが、最初から有意差あるじゃん!っていうの多いと思うんですよね…本当にランダムに集めたのか私も問いつめたいです。笑

今後どうしていけばいいか…私も非常に悩んでます…笑

投稿: ふーた | 2015-06-26 09:20

こういう検証を待ってましたよ!
すごく必要で為になる情報なのに今までは専門家が企業へ遠慮してるのか努力不足なのかで永らく検証されずにきましたから。
一般人がデータを読めない時点ですでに騙そうとする企業(があれば)に対して非力なんですよね。
中学生高校生あたりで科学的な力をつける訓練などできないんでしょうか。
時間と体力の続く限りシリーズでお願いします。
また、明らかにいかがわしい健康食品など相談された時に「絶対効かない」という根拠もないのでうまく止めさせられない場合の対処法や根拠などについての記事も希望します。

投稿: 期待してます | 2015-06-26 10:11

>ふーたさん

 ランダムではない可能性もありそうですが、
あれくらいの人数なら仕方ないのかも知れませんね。
途中でリタイアした2人の体重が軽くて、かつ
100kg超級の巨漢が一人だけ混ざっていれば、
こんなデータになります……か?w

>期待してますさん

 コメントありがとうございます。
消費者の教育も重要な要素のひとつになります。
時間はかかりそうですけどね。
まず、科学的な見方を教えることの出来る先生から、
教育しないといけません。(苦笑)

 さすがに、このペースで続けるのは無理ですけど、
週1回くらいなら、シリーズ化してもいいかも。
ただ、今後の展開次第なんですが……。

投稿: kitten | 2015-06-26 23:00

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