機能性表示食品の制度をもう少し詳しく
「機能性表示食品」制度がスタートしている。
ぼちぼち、商品が市場に出回りつつあるのかな?
これについては、少し前に記事を書いている。
「機能性表示食品は、劣化トクホ?」(2015.4.30)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-f86b.html
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この制度のポイントは、
「事業者の責任において」科学的根拠に基づいた機能性を表示する、というもの。
トクホは、国が審査を行って許可していたんだけれども、
機能性表示食品は、国は審査していない。
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たとえば、難消化性デキストリンを含む食品がある。
メッツコーラとか、ペプシスペシャルとか。三ツ屋サイダープラスとか。
この辺は全部「トクホ」で、個別の商品について、機能性を評価するための
実験が行われており、それを国が審査している。
結果として、同じ「難消化性デキストリン」が入っている食品でも、
試験の内容と結果によって、許可表示が異なる。
例えば、ペプシスペシャルはこちら。
本品は、難消化性デキストリン (食物繊維) の働きにより、
食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ、
食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする
(後略)
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一方、同じ難消化性デキストリン配合でも、
「からだすこやか茶W」だとこうなる。
本製品は難消化性デキストリン(食物繊維)の働きにより、
脂肪の吸収を抑え、糖の吸収をおだやかにする
(後略)
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からだすこやか茶Wの方は、「糖の吸収をおだやかにする」
がついている。これは、そういう試験結果が出ているからだ。
難消化性デキストリン配合のトクホはいくつかあるけれども、
「糖の吸収をおだやかにする」と「血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」
のどちらかのみ、あるいは両方を謳っている商品がある。
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では、「機能性表示食品」ならどうなるか?
キリンから出る、機能性表示食品「食事の生茶」の表示はこうなる。
本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。
難消化性デキストリンは、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加
させるとともに、糖の吸収をおだやかにするため、食後の血中中性脂肪や血
糖値の上昇をおだやかにすることが報告されています。さらに、おなかの調
子を整えることも報告されています。
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これ、キリンはこの製品についての試験はしていない。
あくまで、「難消化性デキストリン」の効果を報告しているだけだ。
(しかも、キリンは論文検索して、リスト提出してるだけ)
国は、この内容について審査はしていない。
ってか、おなかの調子までよくなるのかよ。
万能すぎだろ、難消化性デキストリン。w
いや、食物繊維なんだから、当たり前なんだけどさ……。
ぶっちゃけ、難消化性デキストリンを配合すれば、どの会社であっても
キリンと同じ表示はできるってことだ。
なんというか、苦労してトクホにするのが馬鹿馬鹿しくなる。
まぁ、それが規制緩和、といえばそうなんだけど。
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国は審査しないんだけれども、申請書類は全て公開されている。
つまり、消費者はそれを見て判断することができる訳だ。
問題は、消費者がそれを見て本当に判断できるのか?という点である。
プロが見れば判断できるだろうけど、素人でもできるの?
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全て事業者の責任でやっているんだけれども、
科学的根拠、になっているはずの論文が、
どうしようもなくお粗末、という例が実際にあるようだ。
でも、論文が「お粗末」であることを理解するためには、
ある程度理系の素養が必要になる。一般の消費者には難しいだろう。
国はチェックしない。一般の消費者には難しい。
ってことは、ここは手を抜いたモン勝ち、やったもん勝ち。
まっとうな企業なら、ちゃんとやるだろうけれども、
倫理感のない企業が、不正をやる可能性は高いよね。
(不正、という言葉も微妙な感じだけど)
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国が論文をチェックしないなら、誰がチェックするの?
今はまだ数が少ないからいいけど、今後、膨大な数になってくるよ。
やったところで、どこからもお金が沸いて出ないので、
(むしろ、企業に訴えられるリスクがありうる。)
これを仕事にすることはできない。
じゃぁ、どうする?
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そこで、「それこそ薬剤師の出番じゃないの?」と、
「ドラッグストアとジャーナリズム」のkurieditsさんは書いている。
「機能性表示食品が効くかって?それ、薬剤師に聞いたら?」
(ドラッグストアとジャーナリズム)
http://drugstore.hatenablog.com/entry/2015/06/19/220000
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kurieditsさんは、以下のように書いた。
「機能性表示食品の論文のトリックを誰がチェックするかという問題点が
ある。んー、薬局薬剤師の出番じゃない?」
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個々の薬剤師が、お客さんに対して、単一の商品について答えるのであれば、
確かに、薬局薬剤師が最も適任だと思う。
問題は、「薬剤師が、機能性表示食品を科学的に評価できるのか?」
という一点にある。(苦笑)
また、評価できるとしても、どの程度の手間隙がかかるのか。
業務を考えると、一件で1時間もかかるようなら厳しい。
できれば30分くらいで何とかしたい……。
これはもう、一回やって見なくちゃわからんでしょう。
どのレベルの薬剤師が、どの程度のことなら、どれくらいの時間で調べられるのか。
実践して確認してみようじゃないか。
という訳で、試しにやってみて、結果、感想を発表したいと思う。
この記事でやろうと思ったが、長くなりすぎるので分ける。
(たぶん)今週中にはアップする予定。
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ただ、私は国が審査しているトクホですらぶった切ってる人間だからね。
機能性の評価を、どのようにするかは非常に難しいと思う。
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コメント
はじめまして!
ふーたといいます!
機能性表示食品。私も興味があり検討してみていますが、30分では厳しいですね…泣
しかも科学的に評価できたかと言われると自信がないです…泣
次回楽しみにしています!!
投稿: ふーた | 2015-06-23 15:23
>ふーたさん
コメントありがとうございます。
ふーたさんの記事も、拝見させていただいてます。
あの内容だと30分では無理ですね。(苦笑)
いろんな人が、実際に評価してみることで、
科学的評価に関する問題点も見えてくると思います。
できれば、客観的に評価したいんですけど、
そこが難しいですね・・・。
投稿: kitten | 2015-06-24 21:36
ありがとうございます!
はい!色んな方の評価を見たいですね!そして科学的評価の問題点を明らかにしてそれを解決できれば消費者の理解も高まりますし!
私はとりあえず全ての商品やろうと思いますが提出された論文が複数のものもあり1時間あっても検討しきれません…笑
投稿: ふーた | 2015-06-25 08:13
ふーたさん、kittenさん
ありがとうございます。お二人のご尽力に頭が下がります。
お二人の記事にはとても考えさせられました。ぼくなりのアプローチで、もう一度このことを考えたいと思います。
kittenさんのブログを読み、とても具体的に問題点がわかりました。
投稿: kuriedts | 2015-06-25 09:04
初コメ失礼します。
科学的な評価とはいったいなんなんでしょうか?西洋医学の学問的に分析できることが物事の価値を表すという考え方は思考が偏っているような気がします。
西洋医学では、「分析できないものが廃れていく」傾向がありますが、後に分析手法が発展して理解されるということもあります。
成分自体が本当に効果がないのか、はたまた服用する人と成分の方向性があっていないため効果がでないのか、東洋医学の視点から価値を検討する視点も薬剤師として必要かと思います。
投稿: よし | 2015-06-29 23:25
>よしさん
コメントありがとうございます。
機能性に関する評価は、科学的に可能ですけれども、
おっしゃるとおり科学で評価しにくい価値もあるでしょう。
ただ、機能性表示食品に関して言うと、
メーカーの側が「科学的根拠」を提示していますので、
それに対する評価はやはり科学的にならざるをえません。
科学的に評価されるのが嫌なのであれば、
機能性表示食品を申請しなければいいですね。
実際、そのような判断もありえるでしょう。
投稿: kitten | 2015-06-30 00:41