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機能性表示食品の薬剤師による評価の問題点

 機能性表示食品についての短期集中連載。
この記事だけ読んでもしょうがないので、
3つ前の記事から連続して読んでもらいたい。
今日の記事は、まとめになる。

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 もともと、「薬局薬剤師が、機能性表示食品の評価をできるのか?
という問題があった。で、一昨日と昨日、実際にやってみたわけだ。
やってみた結果の、問題点をまとめてみる。

 最初に、結論を書いておこう。問題点は大きく分けて2つ。

1.悪質な企業に本気で不正をやられると、見つけられない。
2.個人による評価は、客観性を担保できない。

 それぞれ、細かくみていこう。

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 まず、薬剤師が企業の不正を暴くことができるか?
もともと問題になったのは、「壊れているとしかいいようのない」論文を
はりつけて申請した企業(ファンケルさん)があったことである。
あれを、薬剤師が見つけることができるのか?

 これは、時間さえかければ可能、という結論でいいと思う。
ただし、英語論文だと(人によっては)かなりハードルが高くなる。
業務の片手間でやる、薬局薬剤師にとっては厳しいかも知れない。

 ただし、これは「論文がついてきた場合」に限る。
実際は、機能性表示食品の提出書類には、論文がついていないことが多い。
機能性関与成分に関する研究レビューで科学的根拠を説明する場合、
企業は、該当成分に関する論文検索を行い、
その結果を総合的に評価して「科学的根拠」とする。

 この、「研究レビュー」の場合。
悪い企業が、本気で悪質な不正を行ってきた場合……、
一般の薬剤師が不正を暴くことは不可能である。
これを暴くことができるのは、本職の研究者だけだろう。

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 どういうことかというと、まず、論文本文までたどりつけないことがある。
例えば、論文検索の結果、該当する論文がわずかしかないことはありえる。
そして、その全ての論文が「有料」だった場合。
研究者でない薬剤師は、お金を払わないと検証が不可能になる。
この論文で「有意差がない」とされているものを、企業が「肯定的な結果である」
とウソをついてきた場合、薬剤師が気づくことはできないだろう。

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 また、検索で引っかかった多数の論文のうち、趣旨に合わないものを
落としていくスクリーニングで、恣意的に論文を選ぶことは可能だ。
例えば、「否定的な結果が出ている論文」を、あえて難癖つけて選ばないことで、
全体としての評価を上げることができる。

 この不正の場合、気づくことが出来るのは専門家だけだろう。
「この成分で論文検索して、なぜこの論文が入っていないの?」という疑問を
抱くことができるのは、常にその分野の論文を読んでいる研究者だけだ。

 もちろん、一般の薬剤師でも論文検索から全ての論文をチェックすることは、
……時間さえかければ可能だと思うけど、
それを仕事にしている訳じゃないんだから。
日常業務の片手間でやるには、負担が大きすぎる。

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 逆に、そのレベルの不正がなければ、薬剤師は評価できる。
次に問題になるのは、その評価の客観性である。

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 今回、kurieditsさんのメッセージに対して、最初に動いたのはふーたさん。
(ウチにもコメントいただいてます。)
ふーたさんも、ご自身のブログの中で、機能性表示食品の評価を行っている。

「パパ薬剤師の日々彼是」
http://wruskniph.blog.fc2.com/blog-category-3.html

(機能性表示食品のカテゴリでリンクはってます。)

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 私も書いてみて思ったけれども、
いかにして「客観性」を担保するか、に気を使っているのが分かる。
基本的には、(スタートがあれだから、というのもあるが)
企業の資料を鵜呑みにしない、信用しないところからスタートする。

 私は、機能性表示食品、というか、健康食品というカテゴリそのものを
かなり疑問視している。玉石混交、というには、石が多すぎないか?とか。
以前にも、「食品安全情報blog」の畝山先生の言葉を紹介した。
健康食品の正しい利用法は、「利用しない」こと。

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 でも、それって、客観的な見方としてはどうなの?
なかには、私が知らないだけで素晴らしい商品や成分もあるかも知れない。
メーカーの人が見ると、怒られるかもね。

 これも私の個人的な意見だけど……
薬局、特に調剤を扱う薬剤師って、健康食品には否定的な人が多いと思う。
どうしても、自分が普段扱っている医薬品と比べてしまうので。

そりゃ、有意差ついて当たり前の医薬品のデータや論文みてると、
健康食品のデータなんて、効いているようには見えないよ。(苦笑)

 また、医薬品でもちゃんとしたデータとるの苦労してるのに、
健康食品があっさりと「効果がある」みたいに言ってくるのが信用できない。
そんなに簡単にできるなら、みんな苦労してないよ。

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 でも、その薬剤師の基準で、全て見てしまっていいのかな?
また、「科学的根拠」が全て、という訳でもないのが、この業界だろう。
私は以前、サントリーのトクホである「特茶」をかなりこき下ろした
記事を書いたけれども、それは、「効果」についての話。

 商品の評価は効果だけで決まる訳ではない。
ほかに、「値段」もそうだけれども、特に食品でいうと「味」も大事。
私は、「特茶」のもっとも優れている点は、「おいしいこと」と書いたし。
成分(モノグルコシルヘスペリジン)は評価したけれども、
結果として、味の方が今ひとつだった「スタイリースパークリング」
みたいな商品もあったし。(苦笑)

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 なにか、客観的な評価基準が欲しいなぁ、というのが正直なところ。
例えば、研究レビューでRCT1本では弱い、とか。
RCTでも、被験者の人数が50人以上なら多いとか、少ない、とか。
中性脂肪値の変動なら、これくらい動けば十分評価に値する、とか。

 この辺は、ある程度経験をつまなきゃいけない、と思う。
適正な評価をするためには、この業界の「相場」を知ることが必要。
医薬品の「相場」と同じ感覚で、健康食品を評価したら、
どうやったって厳しくなるだろうよ。

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 また、個々の薬剤師が、自分の顧客に対してのみ製品の評価を行う
ぶんには、さほど問題にならないだろうけど、、
ここみたいにブログにアップしてしまうとね、最悪の場合、
訴訟のリスクを抱え込むことになりかねない。

 まぁ、キリンさんみたいな大手企業なら、この程度のPV数の
弱小ブログの批判なんて無視してくれるだろうけど、
アクの強い中小企業だったりすると、いきなり喧嘩(訴訟)ふっかけてくる
可能性も……、かなり低いけど、0じゃないよなぁ……。

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 以上が、薬剤師による機能性表示食品の評価の問題点である。

 この記事でまとめ終わるつもりだったけど、
まだ、今後の展開が書けていない。(苦笑)
FOOCOM(松永さん)が、新たに記事をアップしているし、
そっちも検証、というか検討しないと。

長くなりすぎるので、今日のところはこの辺で切ります。
次回こそ、最後のまとめ、ということで。

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コメント

度々たびたび失礼します。
また、ブログの紹介ありがとうございます!!

本当に客観性の担保が非常に難しいです…
さらに本当にその通りで医薬品に比べると効かないと見てしまいがちです。
なので、私は出来るだけこの提出された論文上ではこの程度の効果がありそうですがどうですか?というスタンスでいきたいのですがどうしても自分の考えが混じりますね…笑

あ!私の方のブログでもリンク貼らせてもらってよろしいでしょうか?

投稿: ふーた | 2015-06-27 09:31

>ふーたさん

 勝手にリンクはってしまってすみません。
もちろん、リンク貼ってもらっていいですよ。

 比較対象を医薬品においてしまうと、
どうしても科学的には劣って見えるんですよね。当たり前ですが。

ふーたさんの、数字や言葉の意味の解説は、すごくいいですね。
あれだけ書くのはとても大変だと思います。

投稿: kitten | 2015-06-27 23:55

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