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アイの物語

 本の紹介、というか読書感想文。

山本弘の短編集「アイの物語」例によって下のリンクはアマゾン。
http://www.amazon.co.jp/dp/404460116X/ref=as_sl_pd_tf_lc?tag=yamamotohir0c-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=404460116X&adid=1JF1FYRRNQ97Y8EMHSXA&&ref-refURL=http%3A%2F%2Fhomepage3.nifty.com%2Fhirorin%2Fainomonogatari.htm

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 この本を最初に読んだのは……いつだろうか。
少なくとも3年前くらいかな?図書館で借りて読んで、衝撃を受けた。
少し前に書いたけど、山本さんの「詩羽のいる街」(これも近日感想アップ予定)の
文庫版を購入するときに、隣にならんでいたのでついで買いした。

 山本作品はかなり読んでるけど、アイの物語と、詩羽のいる街の2つが
飛びぬけてよかった。いや、他がダメという訳ではないのだが。(苦笑)
読んだときに衝撃を受けたのは、その2作品だけだ。

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 アイは、アイビスの愛称。
それは、「I(私)」であり、「AI(人工知能)」であり、「i(虚数)」であり、
「愛」である。

(作者による内容紹介より)
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 ってか、内容は作者による紹介ページの方が詳しいのでそっちにリンク。
http://homepage3.nifty.com/hirorin/ainomonogatari.htm

 一応、短編集なんだけれども、
バラバラに発表された5つの短編に、書き下ろしの2編を加えて、
一つの大きな物語として完結している。

 中盤までは、ただの短編集(ただの、というと語弊があるが)。
ただ、書き下ろしの2編が素晴らしくて、
見事に一つの長編としてまとめてしまっている。

 作者がいうには、
「なかば偶然の産物、予期しなかった奇跡的な化学反応みたいなもの」
で、最初から計算して作った訳ではないらしい。

 最後の話で、それまでの話を全て伏線として使用している。
伏線といっても、実際に短編書いた時には伏線でも何でもなかったけど、
まとめる時に、それらが伏線となるような話を計算して作った、
ということなんだけど。
 
 理屈ではわかるものの、ここまでうまくいくのは偶然の要素も大きいかも。

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 短編集なので、個人的に好きな話、そうでもない話はある。
自分的には、「宇宙をぼくの手の上に」がお気に入り。
でも、この作品は好みがはっきり分かれるような気がするな。

 万人に受けるのは、「詩音が来た日」だろう。
アンドロイドの介護ロボット詩音が、人の想像を超えるところまで
成長する話なんだけど……、
山本さんらしく、あくまで論理的に考える詩音の結論がすごい。

 それでもって、万人に愛を捧げる存在になるんだから。
最後のほうで詩音が歌うシーンがあるんだけど、
よくもまぁ、これだけピッタリの歌詞の歌を探してきたもんだ、と。
逆に、この歌に合わせて話を作ったんじゃないのか、と思うくらい。
泣ける。

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 また、作者である山本さんの強烈なメッセージがある。
最終話、「アイの物語」のラスト。

「理解できないものは、退けるのではなく、ただ許容すれば
 
いいだけのこと。それだけで、世界から争いは消える。
 それがiだ。」

この辺、「詩音が来た日」から、最終話、「アイの物語」を通して、
(ひょっとすると、次作、詩羽のいる街をも)貫かれている、
作者の、おそらくは現実社会にたいするメッセージだろう。

 どうやったら、現実を変えられるのか?
どうやって現実を変えようと思っているのか?
これも、この本に書かれている。アイビスのメッセージとして。

物語(フィクション)の力で

 アイビスは、フィクション、物語の力で世界を変えようとしている。
おそらくは、(できるかどうかは別にして)作者も。

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 もっとも、そこまで真剣に読む必要はないだろう。w
これは単なる娯楽、SF小説の短編集に過ぎないんだから。
楽しんで読めればそれでよいし、自分の気にいった話が一つでも
あれば、それでいいと思うけどね。

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