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詩羽のいる街

本の紹介
山本弘さんの「詩羽のいる街」
(下記リンクはamazon)

http://www.amazon.co.jp/%E8%A9%A9%E7%BE%BD%E3%81%AE%E3%81%84%E3%82%8B%E8%A1%97-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%B1%B1%E6%9C%AC-%E5%BC%98/dp/404100019X
 
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 作者による解説ページ

http://homepage3.nifty.com/hirorin/shiiha00.htm

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 SF作家である山本さんの作品なんだけれども、(そんなに)SFではない。
設定が現代の日本で、非常に読みやすい。

 春、夏、秋、冬の中篇(100ページくらい)4つで1冊の本になっている。
それぞれで語り手、主人公が違うけれども、話は色々なところでつながっている。

 奇跡のような存在である、「詩羽」という女性の物語。
詩羽の能力は、「他人を変えていくこと」だ。

彼女は、「善人が不幸せなのが我慢できない」
そんな詩羽の仕事は「他人に親切にすること」
人と人との歯車を組み合わせて、みんなを幸せにしていく。

 ……説明するとなると難しいな、これ。(苦笑)

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 私のお気に入りは、最終話のゲームの話。
コンセプトは、「協力した方がお互いの利益になる」ということ。
意味のない争いよりは、協力するほうが、お互いに「得」である。
これは、善悪の話ではなく、論理の話。

 詩羽は、正義や、善意、愛なんてものに惑わされない。
あくまで「その方が得になるから」そうしているに過ぎない。

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 現実は、なかなかそうはいかないんだけれども、(苦笑)
物語としては、非常に美しい。人を幸せにする物語だ。

「彼女には、お金はない。そのかわり、生きていく力はたっぷりくれるよ」

 詩羽の「幸せにする力」は、物語の中だけに留まらない。
物語を読んでいる、読者にまで伝えることができる。

少なくとも、私には届いた。
彼女から生きていく力を(ほんの少し)もらった。

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 ただ、この本には「作者の生の声」が出すぎてるから、(苦笑)
合わないって人もいるかも知れないけどね。
これ、作者もわかっててやってる。w

 もちろん、深く考えなくても、エンターテイメントとしても十分楽しい。

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 この作品は2008年に発表されているんだけど、、
第1話に「妖怪もののアニメ、ゲーム」がでてきたり、
「戦まほ(戦場の魔法少女)」という、ある意味、鬱展開の魔法少女マンガが
でてきたり……、なんか、作者が未来を予知していたかのような錯覚に陥る。

 架空のマンガやアニメだけではなく、実在の小説やゲームなんかも出てくる。
「詩羽のいる街」文庫本の解説は有川浩が書いているんだけれども、
これ、作品中に詩羽が読んだことのある本として有川さんの本が出てくるんだよね。
「レインツリーの国」という本。
 図書館にあったから、これも借りてみた。 映画化されるらしいから、
ちょっと見てみたいけど。

 また、第2話では(なぜか)ボードゲームも出てくる。
「アベカエサル」や「ダイヤモンド」をやってるシーンが出てくるんだけど、
これ、実際にやってみたいなぁ、と思った。w
ゲーマーしかわからんだろうけど。

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 個人的には、山本さんの最高傑作だと思う。
いや、他にも面白い本とか、難しい本とかあるけどさ。
読者に影響を与える物語として。

 最後に、詩羽自身の言葉を引用しておこう。

「もちろん、ほとんどの読者にとっては、ただ通り過ぎていくだけかもしれない。
 忘れられるだけかも。でも、それが本当にいい作品なら、何千人に一人か二人、
 その作品に人生を左右される人がいるんじゃないかな」

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 いい作品なんだけど、紹介するとなると難しいなぁ。(苦笑)

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