アボルブが出荷調整
仕事の話。
少し前に、ラノコナゾールの全回収の騒ぎがあり、
薬の安定供給って大事、ということを書いた。
「安定供給のためには」(2015.11.05)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-684a.html
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このなかで、グラクソスミスクライン(以下、GSK)社の
「テノゼット」という薬が中国、天津の爆発事故以来、出荷調整が続いている、
という話を書いたんだけれども、
つい昨日、これを上回る規模のニュースが飛び込んできた。
しかも、同じGSK社。
前立腺肥大症に使われる「アボルブ」という薬が、品薄になり、
出荷調整が入る、とのことだ。
原因はよくわかっていないんだけれども、フランスの工場で何か問題が
あったらしい。さすがグローバルな企業だわ。(苦笑)
どうも、全世界分のアボルブはここで作っていたみたいだ。
効率を求めて集約化すると、万一の時に困る、と散々言ってるのに……
まぁ、聞いていないだろうが。w
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GSK社によると、アボルブの委託製造工場である、キャタレント社
ベントハイム工場において、「フランス当局の指摘を受けたことにより」
現在、新たな生産が停止している状況、だそうな。
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これ以上の情報は、現時点で分かっていない。
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いや、これ聞いた全員が突っ込んだだろう。
「いったい、どんな指摘を受けたんだよ!」
恐ろしいことに、どんな指摘を受けたのかは、
(少なくとも日本語では)どこにも書いていないし、聞いていない。
どうも、GSKの(日本の)社員ですら分かっていないようだ。
そこ、詳細情報教えてくれよ……。
とりあえず、今流通している商品に問題はないらしいんだけど。
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こないだのラノコナゾールみたいなGMPの問題なのかな?
にしても、これ、全世界規模の問題になるんじゃないのか……(汗)
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さて、出荷調整ということだけれども、
私が聞いた感じだと、限りなく「(一時)発売中止」に近い感じに受け取った。
新規の処方を控えて、日数を調節すれば何とかなる、、とも思えない。
一言で言うと、「全然足りない」
これは処方元で抑えてもらわないとどうにもできない。
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やっかいなことに、比較的新しい薬なので、
日本ではまたジェネリックが発売されていない。
今までアボルブが処方されていた人はどうすればいいんだろう?
似たような薬……、事実上、存在しないと思う。
しいていうなれば抗アンドロゲン薬の
アリルエストレノールか、クロルマジノンくらい?
どちらかというと、フィナステリド(プロペシア)の方が近いんだけれども、
こいつは保険で認められていないので高額だ。(苦笑)
アボルブの年間売上げは・・・仮に100億円としてみよう。
(承認時のデータで、ピークは181億円と見積もられている)
わかりやすく、薬価は200円ということにする。年間5000万カプセル。
ちょっと少なめに、3650万カプセルとすると、患者数が概算で10万人くらい?
つまり、少なくとも10万人に影響が出る、と。
私の勤務先でも、該当する患者さんは10人以上。
店に残る在庫は……半月分くらい。(汗)
これは、マジやばい。シャレにならん。
しかも、季節はこれから寒くなる冬、ときたもんだ。
気温が低くなると、泌尿器系は症状が出やすいのに。。
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とりあえず、GSKさんは何がおこってどうなってるのか、
今後の見通しを、すみやかに説明してもらいたいんだけど……
何か、事情があってできていないんだろうなぁ。(苦笑)
グローバルな会社はこんなことがあるから困る。
自分の国で作ってればこんなことにはならないのに。
作り直すなら、ついでに包装規格も何とかしてくれ。w
30カプセル1箱のみって、面倒くさいことこの上ないから。
せめて、100カプセル入りを作ってくれよ。
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このニュース、昨日(11/27)に発表されたんだけど、
実は少し前に、前兆があった。
アボルブと同じ成分の「デュタステリド」を使う新薬(ザカーロ)が、
発売延期になっているんだよね。これが11/20の発表。
その後、続報で書かれているのは、どうも今回(アボルブ)と同じ
内容らしい。
そりゃ、同じ成分で、同じ会社に製造委託しているんだから、
同じ結果になるのは当たり前だと思う。
……ってことは、少なくともGSK社は11/20の時点で
アボルブもやばい、っていう情報はつかんでいたはずだよね。
まぁ、今更言ってもしょうがないけどさ。
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時々、こういう騒ぎがあるんだけど、今回は近年まれにみる規模かも。
チラーヂン並かも知れない。ひょっとしたら大したことないのかも知れないが、
なんにせよ、詳細が分からないのでなんともいえないな。
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コメント
Kittenさま
いつも楽しく拝見しています。
最近、水虫薬の回収やら、出荷調整やらGMP周辺の問題が多いような気がしますね。メーカにも余裕がなくなってきているんでしょうか?
ちょっとググってみたら、
Catalentの本社のHPには以下の記事が載っていました。
http://www.catalent.com/index.php/news-events/news/Catalent-Working-to-Re-Start-Production-at-French-Facility
あまり具体的な表現ではありませんでしたが、
カプセルの取り違え?、異種混入?を受けての行政指導のようです。
通常のGMP当局査察というよりは、市場などからの通報、苦情などを受けて、立ち入り調査が実施された可能性も考えられますね。
いずれにしても、再開にはちと時間がかかりそうな案件のようです。
投稿: 通りすがりの喫煙者 | 2015-11-30 17:33
GSKは退場ですね。
アボルブにかかわることだと思うのですが(仏語わからないので何んとなくしか理解してませんが・・・)
フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM)11/19付けの記事で
catarent社のことが載っています。下がURLです
http://ansm.sante.fr/S-informer/Actualite/L-ANSM-a-suspendu-l-activite-du-laboratoire-CATALENT-France-Beinheim-par-mesure-de-precaution-Point-d-information
今流通している製品も、使用しないほうが良いのかな?
投稿: 茨城のおじさん | 2015-11-30 19:13
>通りすがりの喫煙者さま
>茨城のおじさんさま
情報提供ありがとうございます。
catalent社で検索すれば情報が出るんですね。
GSKのサイトだと何の情報もないので・・・。
状況がわからないと、見通しが全くたたないので、
出荷調整と言われてもできることがありません。
せめて、「半年後に復旧」とでも分かってればいいんですが。
数年前まではアボルブなしで治療していた訳ですから、
なくなっても命に関わるようなことは少ないでしょうけど。
投稿: kitten | 2015-12-01 23:05