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残薬調節を手軽にできないか?

 仕事の話。

 薬剤師の仕事のひとつとして、「残薬の調節」がある。
「残薬」とは、文字通り「残っている薬」のこと。

 おもに、患者さんの飲み忘れでたまっていってしまった薬のことを言う。

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 特に高齢者では問題になっていて、
服用されずに残っていく薬の額は、500億円以上とも言われている。
国民医療費がどんどんかさんでいくので、こういうところで少しでも節約したい。

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 残薬が発生する原因としては、一番多いのは飲み忘れだろう。
一日三回服用する薬の、昼だけが服用忘れて余っていく、
というのはよくある話。

 実際問題、多くの薬を間違いなくのみ続けるってのは、
想像以上に難しかったりする。(苦笑)
ぼーっとしてると、のんだかのんでないかわからなくなったりして。
最近、私も毎日服用する薬があるんだけれども、
かなり意識を集中していないと、飲み忘れることもある。
マジで、一週間分の薬をセットする箱でも使おうかと思うほど。

……、私は、薬のプロであり、かつ、まだそこそこ若いはず。w
それなのに、しっかり服用するのって結構難しいんだ
実際、やってみてわかることもあるんだね。

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 さて、飲み忘れ以外に「残薬」が発生するパターンとしては、
医師の処方間違いがある。日数を間違えて出してしまったりとか。
 複数の医療機関から同じ薬をもらっていて、
片方を服用していないパターンとか。

 ひどいのになると、患者さんが勝手に薬をやめているパターンも。
副作用が嫌、とか、服用しなくても平気、と自分の判断で薬をやめて、
かつ、医師にも伝えない。
 結果、医師はちゃんと服用していると思っていて薬を出し続ける。
患者さんは、もらってるけど服用しない。
薬が余っていることを伝えると、医師が機嫌を悪くするから。

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 もったいない、よねぇ。

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 そういう訳で、去年の春の診療報酬改定から、
薬剤師による残薬の確認、ってのが、ちゃんと書かれている。

 ただ、そうやって残薬を発見したところで、
薬剤師は、勝手に薬を減らすことはできない
必ず、病院や医師に照会して、処方内容を変更してもらうことになる。

 小さな医院ならまだいいんだけど、大きい病院なら時間がかかる。
ってか、そもそもこっち(薬剤師)の相手をしない病院もあったりする。

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 病院にファックスで疑義照会だと、往復でかなり時間がかかるし。
なので、基本的には患者さんには「次回、医師と相談して」で
すますことも多い。

 ただ、こないだ「今回で治療は終わりなんやけど、薬余ってるねん」
という患者さんが来た。
このパターンだと、そもそも「次回」がないから今回で調節するしかない。

 と思って疑義照会したんだけどね。
病院は「処方箋どおり出してくれ」の一点ばり
別に、服用続けても毒になるような薬じゃないから、と言って。

 確か、エルカルチン錠だったかな。
主成分はL-カルニチン。うん、毒になるような薬ではないわ。でもね。

もったいないんだってば。

エルカルチンって300mg1錠で300円近くする。
それが一か月分もあれば・・・どうよ?
それでも、病院がそのまま、と言い張れば、こちらはどうにもできない。

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 こんな例もあった。

薬が余ってるから、と医師に相談した患者さんが医師から
「次回調整します」と言われた。

でも、その前の時も「次回調節」と言われたらしい。(苦笑)

もったいないから調節したい患者さんが薬局に頼み込む。
薬局としても、なんとかしてあげたいから、病院に電話したんだが、、

次回って言ってるでしょ!」と医師に言われて終わった。

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 次回(来春)の調剤報酬改定で、是非お願いしたいことがある。

薬局、(薬剤師)に、残薬削減権をくれ。マジで。

残薬が発生するのは確かに問題なんだけれどもさ、
発生してしまったもんはしょうがないでしょ?
次回以降、対策は考えるとして、とりあえず今回は薬減らしてくれよ。

 イメージとしては、後発品の代替に近い感じで。
薬局からは、事後報告として、病院に連絡を入れるのは必須だけど、
あくまで「事後でよい」ことにする。

 実際にどういう運用を想定しているのかは知らないが、
中医協でもそういう話があるらしい。

「後発品変更不可」と同じような感じで、「残薬削減可」という欄を
処方箋にいれてしまえば……。

 医師会側は反対しているらしいけどね。(苦笑)
反対してもいいけど、それなら薬剤師からの疑義照会にきちんと答えてくれよ。
こっちは、ちゃんと仕事で残薬調節しようとしているんだからさ。

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 個人的には、それって点数(報酬)なんていらんけど、
経営的には、点数つけないと残薬調節しない薬局もあるだろうしなぁ。

「残薬調節で削減できる点数」>「残薬調節による加算点」でないと、
医療費削減にならないのは自明。

ただ、点数つけると毎回残薬調節するような薬局が出るかも知れないから、
点数つけるにしても「月に1回まで」にしておいた方がよさそうだけど。

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('14~16)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
残薬のことで検索していましたら、こちらのブログにたどりつきました。

2016.4月から、「残薬の調整」ができるとTVでも聞いていて、病院の看護師からも言われたので、主人の薬を出してもらってる薬局に行ったんですけど、「処方箋の数でしか出せません。」といわれ、「4月から調整してもらえるって事になったんじゃないですか?」と言っても「それはできません。」一点張りでしたので、そちらでは薬をもらわず帰って来ました。

できる薬局とできない薬局とあるんですかね?
因みに私が使ってる薬局に聞いたら、できますって言うんですよ。

ちゃんと飲んでないじゃないかって思われちゃうのが嫌で、なかなかお医者さんに減らしてくださいって言いづらかった薬の件がこれで解消できると思ったのに・・・

最初の薬局の対応は、
出来ない理由など説明はなくって、ただただ「処方箋の通りにしか出せない。」「調整したいなら、お医者さんに処方箋の数字を変えてもらってきてください。」ですもん。

ガッカリです。

そんな事こちらに書いても仕方ないですが、残薬の事を考えてる方に聞いてもらいたかったです。

はじめましてなのに、長文失礼しました。

投稿: ゆみ | 2016-04-07 10:41

>ゆみさん

コメントありがとうございます。
今年の4月から、処方箋の方式が少し変わっておりまして、
「残薬調整する時の対応」について、書かれています。
で、病院側が「事後報告でよい」にチェックを入れていれば、
薬局で残薬調整できる、仕組みになってます。

 なのですが、今のところ、
そこにチェックが入っている処方箋を見たことがありません。
おそらく、多くの病院は、そんな項目が存在すること自体、
認識してないんじゃないかと思います。


 そこにチェックが入っていない限り、今までと同じですので、
薬局から病院に連絡入れて、数を調整してもらうことになります。
ただ、病院によっては(特に大病院は)
薬局からの残薬調整の問い合わせに一切答えない、という
方針の病院もありまして、その場合はもうどうしようもありません。

 なので、薬局によって変わるというよりは、
処方元の病院の対応によって変わる、という方が近いです。
(もちろん、最初の薬局が手を抜いている可能性はありますが)

 制度はあるけれども、ほとんど活用されていない、のが
今のところの現状ですね。
病院側も4月からの改正でごたごたしてる部分もあるので、
もう少し落ち着いたら、できるようになるかも知れません。

 少なくとも、私の薬局では近隣の病院に
近日中に残薬調整できること、チェックつけて欲しいこと
などを説明しに行く予定ですし、
大病院には、市の薬剤師会が残薬調整できるように
はたらきかけると思いますが・・・。

 もう少しお待ちください、といったところです。(苦笑)
ルールはできているんですが、活用できてませんので。

投稿: kitten | 2016-04-07 21:43

通院してるのは小さな病院ですが、会計窓口にいた方は、処方箋の下の部分を指さして、「ここにチェック入れてあるから・・・できるはずなんだけど」って言ってましたし、実際私がお世話になってる薬局では対応してもらえました。
ちょっと時間がかかってしまったけど、やってもらえるんなら待てます。
最初の薬局は、ドラックストア―で処方箋の薬を出せる所なので、次回からはちゃんとした「薬局」に行く事にしました。
やっぱ、餅は餅屋。

付け焼刃みたいなところはもう勘弁です。
Tポイントにひかれて行ったのが間違いでした。

投稿: ゆみ | 2016-04-08 11:14

処方せんの残薬チェックの情報提供は、
あくまで残薬があることを情報提供するだけで、
薬局で残薬調整を行って事後報告することを認められたものではないと理解しているのですがいかがでしょうか?

医療機関との間で、残薬調節を行い事後報告でよいことの取り決めがあればいいんでしょうけど。

情報提供を行うこととしか決められてないので、取り扱いについてあいまいですね。

投稿: マサ | 2016-04-08 12:23

>マサさん

 うわ、本当ですね。
中医協で話題に上がったときには、
事後報告でいい、みたいな話だったと記憶していたんですが、
最終決定の文章を見る限り、玉虫色ですね・・・。
疑義解釈資料も出てませんし。

 制度の趣旨は残薬をなくすことで無駄を省くのが
目的のはずなので、勝手に「事後でいいもの」と
思い込んでいました。
 というか、そうでなければ全く今まで通りなので、
わざわざそんな欄を作らなくても、と思ってしまいます。

 個々の医療機関と個別に対応する分には問題なさそうですが……。

投稿: kitten | 2016-04-08 15:09

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