「ぼくの嘘」の感想(ネタバレあり)
先週書いた、「わたしの恋人」と「ぼくの嘘」の記事。
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-7210.html
今回はその続き。
「ぼくの嘘」の方の感想である。
この作品は、ラストの収束が本当に美しいんだけど、
おおっぴらには書きにくかったりする。
「わたしの恋人」がチャプター1から24まで。
「ぼくの嘘」も同じく、24チャプター。
「ぼくの嘘」のラスト、チャプター24のためだけに、それまでの47チャプターがある。
作者は、このラストシーンを書くためだけに、チャプターを47も積み重ねた。
そんな内容を、ネタバレで書いて良いのかよ?と。w
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すでにアラフォーに含まれる30代後半のおっさんである私が、
不覚にも涙して感動した。
これ、前もってネタバレされたらきついわなぁ。
なので、もし、未読の方で、
少しでも気になって「ぼくの嘘」を読もうかな、という人は、
この感想を読むべきではない。
じゃぁ書くなよ、って感じもするんだけど、
私がネタバレ書きたいんだからしょうがない。
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さて、もうしばらく、ネタバレにならない文章を続ける。
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<ネタバレまで、あと130行くらい>
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文庫版の「ぼくの嘘」の発売は、今年の初めだったようだ。
私が持っている文庫本には、帯に「カドフェス」と書いている。
出版元の角川文庫が今年の夏に行ったキャンペーンのようだ。
対象は、100冊弱になるのかな。
藤野恵美さんの本では、
「わたしの恋人」
「ぼくの嘘」
が両方入っている。
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「ぼくの嘘」は、「書店員が選んだ第1位」に選ばれていた。
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いや、他にもたくさん紹介されているんだけれども、
有川浩とか、東野圭吾とか、名だたる作家に混ざって
選ばれているのが、ちょっと意外だったので。w
この作品に「やられた」のは、自分だけではなかったのか、
とちょっと安心した。
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<ネタバレまであと100行くらい>
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もう少し、情報。
「わたしの恋人」と「ぼくの嘘」は
続編、というか、スピンオフというか、
(少し)話がつながっている程度なんだけれども、
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いや、これは2冊で1つでしょ、という作り方をしてある。
それは、先週も書いたんだけどね。
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ただ、今年、シリーズ第3弾「ふたりの文化祭」が
雑誌で連載されていたらしい。
少なくとも「ぼくの嘘」は、後でネタバレするけれども、
もはや「続く」話は残っていない。
あれで、きれいに完結している。
じゃぁ、何を書いたんだろう?
気になるけど、さすがに雑誌はちょっとねぇ……。
そのうち単行本になって、文庫になると思うけど。
読めるまでに時間がかかるなぁ。(苦笑)
普通のスピンオフかな、と想像してる。
さすがに、ここまでの2作を枕にしての、完結編、
なんてのは、論理的に無理だろうと思うので。w
「わたしの恋人」の方は続編書けないこともないが、
「ぼくの嘘」はちょっとどころでなく厳しい。
というか、「文化祭」なんてタイトルには絶対にならないので。
また、男子目線と女子目線がくりかえしで語られる
高校生の恋愛物語なのかな?
とある情報だと、ヒロインは八王子さんらしい。
「ぼくの嘘」の脇役だけど、推理力のある図書館の主、ってイメージかな。
<ネタバレまであと60行>
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あ、行数稼ぎのどうでもいい話の追加。
「わたしの恋人」なんだけど、
なぜか、「医薬品学習研究所」さんに感想が載ってる。w
(以前、ウチにもコメントくれたことあります。)
http://iyakuhingakusyu.net/2015/06/28/watashino/
薬学系?のサイトで、この作品を紹介したのは、
たぶん、私で二人目のはずだ。
そんな狭い世界で、趣味がかぶることってなかなかないよね。
しかも、(たぶん)それなりの年齢の男性なのに。ww
.
私がこの作品を読むきっかけの一つになっている。
もともと、藤野恵美さんは子どものつながりで知っていたけど、
一般書もあるのか、と。
「ぼくの嘘」は読まれてるのかな?
ってか、あのサイトにこの恋愛小説の感想は、
相当「浮いてる」かな、書きにくいかもね。w
ウチみたいな「雑記帳」じゃないから。
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さて、そろそろ。
ネタバレに入ってもいいかな。
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こんだけ警告しておけば、
もういいよね?
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<ネタバレします>
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一言で感想を言うと「してやられた」になる。
なんで「ぼくの嘘」というタイトルなのかさえ、忘れていたわ。
物語の概要。
主人公は、前作の古賀くんの親友であった、笹川くん。
前作でも、なんかそんな感じは読み取れていたんだけれども、
彼は、古賀くんの彼女、森さんに恋心を抱いていた。
絶対に好きになってはいけない相手に対する恋、になる。
そんな彼が失態を犯す。
たまたま、森さんが忘れていったカーディガン。
学校の屋上で、周りに誰もいない。
思わず、森さんのカーディガンを抱きしめた。
.
ここに登場するのが、もう一人の主人公、結城さん。
笹川くん、森さんと同じクラスで、文武両道、
モデルまでやってる「学校一の美少女」である。
なぜか、写真が趣味だった結城さんは、学校の屋上で偶然にも、
ひとりの男子が
「祈りを捧げるような姿勢でカーディガンに顔をうずめている」
のを発見し、思わず携帯で写真を撮る。
笹川くんは、シャッター音を聞いて愕然とする。w
以下、一部引用。(笹川くん目線)
.
屋上でこっそりクラスの女子の服を抱きしめているところを写メに撮られた。
人生オワタ。
これ以上に、今の心境を適格に表現できる言葉があるだろうか。
.
引用終わり。
さすが、オタクの笹川くんらしい表現である。ww
確かに、人生オワタとしか言いようがないわな。w
この二人の話は、こんなところからスタートする。
前作とのあまりの違いに、おののくわ。
この後、女王様気質の結城さんは、笹川くんを下僕として使いたおす。
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結城さんは、小学校からの親友である、かすみちゃんに恋をしている。
そう、結城さんは真性の同性愛者である。
もちろん、かすみちゃんには想いを伝える訳にはいかない。
そんなかすみちゃんに彼氏ができた。変な相手じゃないかどうか確認したい。
そこで、笹川くんを(偽の)彼氏にして、かすみちゃんとWデートをした。
.
いやいや、学校一の美少女で女王様な結城さんが、
地味な二次元オタクの笹川くんを彼氏にするって、ありえないでしょう?w
でも、結城さんは男子に全く興味がない。
「男子はみんなカボチャにみえる」ので、
偽の彼氏がイケメンである必要はなかった。
また、笹川くんが森さんに片思いしているのも知っているので、
自分を好きになる恐れもない、と。
確かに、条件として都合がいい、か。
ま、ご都合主義に見えなくもないが。w
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でも、この二次元オタクと女王様のカップルが、
意外にちゃんと成立しているから面白い。
もちろん、お互いに「まね事」とわかってはいるんだけれども、
二人だけの買い物シーンとか、食事のシーンなんかは、
ごくごく普通の気の合うカップル、といってもよさそうなくらいだった。
.
最終的に、ダブルデートの結果がひどいことになる。
かすみちゃんの彼は、実は奥さんがいることが発覚する。
結城さんは、何としてでも二人の仲を切り裂こうとして、
一応、それには成功した。
笹川くんも、(意外にも?)役に立って活躍したので、
結城さんは、彼を束縛する原因となっていた写メを削除した。
これで二人の関係も解消。
しかし、結城さんにとっては最悪の結末で終わる。
二人の仲を邪魔したことで、かすみちゃんから決定的に嫌われ、
絶交されてしまう。大好きな初恋の人であり、かつ、
「一生モノ」であったはずの親友に、拒絶されてしまった。
.
笹川くんは、といえば、ダブルデートの最中に結城さんにときめいてしまう。
また、彼の冷静な自己分析の結果、自分は
「他に誰か好きな子のいる女の子」の笑顔に惹かれることに気づく。
それでも、彼は二次元オタク。問題の写メさえなければ、
もう結城さんに関わる必要はない。オタクに戻ればよい。
どうせ、結城さんは笹川くんを必要としていないのだし。
物語はそこで終わる、BadEnd。
……な訳ないよね。w
いかにもゲーム好きな笹川くんの想いが描かれている。
以下、一部引用(笹川くん目線)
.
それなのに、胸の奥が、ざわめく。
どこかでルート選択を間違ったような……
これは、トゥルーエンドではない。真実の結末が別にあるような……。
.
引用終わり。
ここから、話は一気に急展開、、ということもない。
彼は、もう一度結城さんに関わることを決めただけで。
今度は、下僕ではない、友達として。
だって、彼女は同性愛者。自分は、さえない二次元オタク。
告白して成功する可能性は、「今は」ゼロだから。
.
で、最終章、チャプター24.
ここで、異常な年代ジャンプが入る。
結城さん34歳の誕生日。
は??
「ぼくの嘘」では、キャラクターの学年は書かれていないけれども、
前作「わたしの恋人」では、高校1年生だったはず。
つまり、せいぜい16歳だった二人が、最終章で34歳になってる。
そして、笹川くんの執念は、このラストで実る。
実に18年もの間、ただの友達の一人として付き合った後、
絶好のタイミングを見計らっての愛の告白を決行する。
ラストから、一部引用。(結城さん目線)
.
全身全霊、彼のすべてが、全力で、あたしのことが好きだと伝えてくる。
こんな顔、これまで一度だって、見せたことなかったくせに。
こいつ、とんでもない、嘘つきだ。
.
引用終わり。
タイトル「ぼくの嘘」は、ここにつながる。
高校1年生で好きになり、それまでの人生よりも長い18年間、
想いを隠し続けたことが、「ぼくの嘘」だ。
笹川くんは、二次元オタク。そもそも、リアル彼女なんていなくても平気。
最後までタイミングが来なくても、別に構わなかった訳だ。
先週も書いたとおり、この恋は実を結び、
「最後はキスシーン」で終わる。
.
で、感想。
このラストがなければ、結城さんはBadEndで終わってるよねぇ。
というか、このラストでもBadEndに近いと思う。
親友であり、初恋の人でもある、かすみちゃんを失ったということは、
高校生の結城さんにはあまりにもひどい話だ。
で、TrueEndになるのは18年後って・・・おぃ
.
最後に年代ジャンプ、という手法はよく使われると思う。
最近読んだ本では、有川浩「海の底」なんかもそうだった。
でも、せいぜい「5,6年」の年代ジャンプが普通じゃないの?
なんで、18年もの間、TrueEndにできなかったのか。
.
物語の作者は、この年数を選ぶことができる。
最終章は、「それから10年後」、とかでも書けたはずだ。
二人が社会人になっていればいいんだから。
あえて18年後。結城さんを34歳にさせたのはなぜ?
一番、感動的な年齢、という計算は確かにそうなんだけど。
恋愛を重ねて、婚期を逃して、でもオバサンには入らない、という。
34という年齢は、そんなギリギリの年齢だろう。
そこまで、結城さんを「不幸」に留めおいたのはなぜ?
かすみちゃんの彼の「呪いの言葉」のせい??
うーん。
もちろん、笹川くんの「執念」を描くためには、
長ければ長いほどいいんだけどさ。
.
以下、私の解釈。
「わたしの恋人」の森さんの父親、今作の二人の父親。
(おそらくは)、みんな浮気している。
当然ながら、浮気は良くないこと、として書かれている。
特に浮気されている女性から見ると。
でも、浮気だって、恋愛の一つの形なんだ。
かすみちゃんは、騙されていたとはいえ、
好きになった人が既婚者だった。彼からみると、立派な浮気だ。
結城さんは許せなかったので二人の恋をつぶしたが、
「好きになるのに理由なんかいらない」というのも、恋愛の一つの真理。
浮気だからといって、好きな気持ちを簡単に消せる訳じゃない。
そして、笹川くんも、結城さんも。
二人とも、最初から「相手のいる人」を好きになっているんだ。
その恋は、成就すればすなわち相手から見ると「浮気」なんだよ?
もちろん、二人とも成就させる気はなかったけどさ。
.
浮気は許せないけれども、
立場を変えれば自分だって「浮気」を誘っているようなもんだ。
私は、ラストの18年もの「時間」は、
作者から、笹川くん、結城さんにあてた、罰というか、試練だったのかな、
と思った。
以上。
.
という訳で、論理的にというか、時間軸的に「ぼくの嘘」の
続編を書くのは非常に難しい。
3作目のタイトル「ふたりの文化祭」ってことは、
どう考えても高校時代の話でしょ。
また、別の二人の話になるのかな?
ひょっとしたら、「嘘をつき始めた頃」の笹川くんの姿が
(話の片隅で)描かれているかも知れない、くらいかな。w
がんばれ、笹川くん、君が報われるまでにはあと18年かかるぞ。ww
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