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在宅の始まり

 今日から3日間の予定で、私が過去に関わった在宅医療についての話を書く。

薬剤師にとって「在宅」というと、「居宅療養管理指導料」になる。
患者さんのおうちに出向いて、お薬を説明し、服薬支援する、と。

 ただ、単なる「お薬の運び屋」になってしまうことも多い。
以前の職場では、そういう「運び屋」としての在宅に関わったことはあったが、
こんなんで点数もらっていいのかよ、というレベルだった。
最初に失敗してしまうと、途中からちゃんと仕事をするのは
なかなか難しい。

.

 在宅が始まるパターンは色々あると思うが、
今回紹介するケースは、本当に「突然」ふって沸いたように始まった。

ケアマネージャーさん(以下、ケアマネ)が店を訪ねてきて、
「こちらでは、在宅はできますか?」と聞かれたのだ。

「在宅できるか?」と聞かれたら、「できる」としか答えようがない
だって、いつでも在宅ができるように、届出は全部済ませてあるわけだし。
会社としても、今後、在宅医療に関わっていくことは必須になる訳で。

 また、(当時はともかく)現在であれば、
在宅医療に関わることが、基準調剤加算の条件のひとつになっている。
もし、ケアマネさんから「在宅できますか?」と聞かれて、
「できません」と答えるようなら、そこは基準調剤加算を取れないだろう。

 なので、たとえ経験なんかほとんどなくったって、
「在宅できます」としか答えようがない訳だ。

.

 ケアマネに状況を確認する。
患者さん(仮名、Iさん)は、明らかに介護が必要な状態でありながら、
今まで介護保険を利用していなかった、男性の独居老人。

 Iさんは非常な医者嫌いであったため、今までまともな医療を
受けてこなかった。ケアマネは、近くで在宅医療をやってくれる医師と、
薬局に声をかけた、という訳だ。

 ケアマネ主体で在宅医療が始まる、というケースは、
薬局としては珍しいかも知れない。
こういうケースで始まったため、医師とはまったく面識がない状態から
在宅がスタートすることになった訳だ。

 患者さん宅も、医院も、薬局からは自転車でいける距離だが、
それほど近いわけではない。どちらも、自転車で5分以上かかる。
しかも、薬局からみると真逆の方向だったりして。

 とりあえず、医師に挨拶にいってみたが、一歩目から躓いた。(苦笑)
この先生、基本的には院内処方するので、薬局とつきあったことがない。
在宅の場合は、処方箋を出していたようだけれども、
薬局に訪問を依頼したことは全くなかったらしい。
「ケアマネかヘルパーが薬局に薬を取りにいけばいいだろう」と。

 なので、医師はそもそも薬局が介在することに反対だった。

 いや、それでもこっちはケアマネから依頼を受けている訳で。
介護のプランは、基本的にケアマネが決める訳だから、
先生が嫌だと思っていても、ケアマネが薬局を使うと決めたのなら、
薬局としては動かなくてはならない。

 正直に書くと、面倒くさいことはやりたくないので、
処方箋をもってきてくれる形の方が楽なんだけどね。w

.

 なんとか先生を説得したものの、問題となったのは
処方箋の受け渡し」の方法である。
医師は、あくまで患者さんに処方箋を渡す、と言っていた。
薬局にFAXは送ってくれるものの、原本は後で。

まず、先生から患者さんに処方箋をわたして、
その後、患者さんから薬局に渡す、ということになった。
処方箋の原本が薬局に届くまでには、かなりのタイムラグが発生する。

 最初からつきあいのある医師であれば、もう少しやりやすい形で
やらせてもらうんだけどね。
処方箋は、医院から直接薬局に郵送してもらうか、取りに行った方が
わかりやすいんだけど、、先生が強硬に反対したために断念。
結局、そこのところは医師に押し切られる形になった。

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 実は、以前にも在宅の話が出たことがあったんだけれども、
病院があまりにも遠すぎて処方箋の受け渡しが困難、となって
話がポシャったこともある。
 先生についてる門前薬局とかなら、この辺が問題になることは
ないだろうけれども、面で色々なところから処方箋を受ける薬局だと
在宅時の処方箋の受け渡しは、問題になることも多い気がする。

.

 なんとか医師との話をまとめると、今度は患者さんの相手。
Iさんは、気難しいおじいちゃんだった。
基本、医療者を信用していない、という。(苦笑)

 それでも、ケアマネに間に入ってもらいながら契約をまとめる。
在宅をするときは、色々と契約の書類が必要。
このあたりは、ウチの会社のサポートを受けながら作ったけど、
個人でやってるとこはしんどいかもね。
薬剤師会とかで相談にのってくれるかな?

 幸い、ケアマネはなれていたので(当たり前だ)、
書類さえそろえばあとはさくさくと進んだ。
説明こそしたけれども、実際は患者さんから判子を借りて
押しまくっていたが。(苦笑)

 始まるまでで、一苦労。
慣れてくればもう少し楽にいけるんだろうけどね。。

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コメント

こんばんは

在宅のお話、興味深く読ませていただきました。
大変参考になります。

当薬局も在宅を始めたいのですが、なかなか難しい状況でして、
でもいずれは・・・と思っています。

続きがぜひ読みたいです。
続報お待ちしてます。

投稿: ESKI | 2015-12-10 21:26

いわゆるケアマネ主導型の在宅はケアマネの力量に
左右されると思います。

特に医師の信頼が厚いケアマネだとスムーズに進むことが
多いように感じます。

処方提案でも薬剤師が医師に伝えても駄目だが
ケアマネが伝えるとすぐに反映されたという
こともあります。

薬剤師としては何か複雑な気分ではありますが・・・。

投稿: とおりすがり | 2015-12-10 22:22

>ESKIさん

 コメントありがとうございます。
慣れてる人は当たり前のようにやるんでしょうけど、
最初の一歩は、やっぱり難しいですね。

>とおりすがりさん

 ケアマネと連携がとりやすいのがメリットですね。
医師主導で始まる在宅だと、逆にケアマネと連携が
とりにくいような気がします。

投稿: kitten | 2015-12-12 18:08

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