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「ふたりの文化祭」

「わたしの恋人」「ぼくの嘘」とつづいた、
藤野恵美さんの「神丘高校」シリーズ3作目。

「ふたりの文化祭」(amazon)

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 シリーズ1、2作目はここでも絶賛したので、
3作目も紹介しないと。発売は今年の3月。
もう図書館に入ってきてたので読んでみた。
 最終的には買うつもりなんだけど、前2作を文庫で買ってるから、
できれば文庫に落ちるのを待ちたい。(苦笑)

勝手に「神丘高校シリーズ」と書いたけど、
実は、高校名が判明したのは今回。
それまでは、高校名すらわかっていなかった

 それどころか、第1作「わたしの恋人」の頃は、
「県内屈指の進学校」という設定もあったかどうか微妙。
古賀君がそれほど頭よい印象がないので。w
次の「ぼくの嘘」では、明らかに進学校だったけど。
女王様の結城さんが入学してるんだからそうだろ。

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 続編、というよりは、スピンオフ、といった方が近い。
時間軸は、「わたしの恋人」→「ぼくの嘘」→「ふたりの文化祭」の順で
間違いない。

 前作から引き続き、結城さん、笹川君、森さんが脇役として登場している。
文化祭の演目に「お化け屋敷」があがったときの結城さんの反応は、
今回の話が「ぼくの嘘」の遊園地エピソードの後であることを示している。

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 例によって主役は男女一人ずつ。
で、男子目線、女子目線の話が交互につづられていく。
この辺、前作までを踏襲している。

 男子は、新キャラ。バスケ部イケメンの九條くん。
女の子に優しく、気配りはできるけど、計算高い。
自分がイケメンで、女子からもてることをはっきり自覚している。
なかなか、いやな感じの主人公だ。(苦笑)

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 女子は、前作の脇役、図書委員の八王寺さん。
前作ヒロインの結城さんの友達?というポジション。
本をこよなく愛する、地味な文学少女。

 前作を読んだときは、結城さんと普通に会話していたし、
結構かっこいいキャラに見えていたけれども、
主役になり、八王寺さん目線の話になると、ちょっと印象が変わった。
自分に自信がない、訳ではないんだけれども、
自分には決定的に何かが欠けていることを知っている。

 少し引用する。

「なにしろ、私の好みのタイプは太宰治である。
 どうしようもなく繊細で、圧倒的な才能を持ちながらも、
 弱くて自堕落なダメ人間。嗚呼、太宰好きすぎる」(P22)

 引用終わり。

 はっきり言って、恋愛に向いてないタイプの人間だ。(苦笑)
このシリーズ、前2作は恋愛モノだったんだけど、
今回、九條くんはともかく、八王寺さんでいいのか?w
というか、この二人が結ばれる話がありうるのか?

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 一応、この二人、「幼馴染」という設定がついている。
ただし、気づいているのは八王寺さんだけ。
九條くんは、八王寺さんに言われるまで気づかなかった。
保育園では一緒だったけど、小学校に入ってから八王寺さんは
転校して、しかも親の離婚で苗字が変わっていたので。
 ただ、苗字が変わっていなかったとしても、
九條くんは気づかなかったんじゃないかな?
明るく人気者の九條くんと、ひっそりと地味な八王寺さんは接点がないから。

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 この辺までは序盤で語られるので問題ないかな。

 終盤にかけての話も書きたいので、
例によって、改行する。

 ネタバレがいやな人は、読まないように。

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 で、行数かせぎの雑談。

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この作品、YA(ヤングアダルト)向け。

ようは、中高生くらいをターゲットにした話。

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 最近、私は児童書もよく読んでいる。

こないだ紹介した、

「わからん薬学事始」なんかは、

むしろ、小学校高学年でも読めそうな話。

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 なんか面白い本があれば、

大きくなってきた子ども達に見せてみたいな

と思うわけだけれども。

 実際のところ、親の勧める本なんて、

そんなに読むわけないかも。

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 でも、自分の読書遍歴を思い出してみると、

母親の影響はかなり大きいと思う。

アガサ・クリスティは家に大量にあったから

よく読んでいたなぁ。中高生の頃。

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 小学生の頃で記憶に残っているのは、

氷室冴子「なんて素敵にジャパネスク」である。

今、冷静に考えると、うちの母、ちょっとおかしい。

これ、少女向けのコバルト文庫なんだが。w

 私が読んでいたのは小学生時代なんだけど。

普通、小学生向けの本ではないよなぁ。

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 話がそれた。

で、今回の「ふたりの文化祭」は、って言うと、

これが、少し子どもには勧めにくいんだ。

なぜなら、八王寺さんの友達、アリサが、

筋金入りの腐女子で、しかもかなりきわどいことを

べらべらとしゃべるので。

 以下、アリサと八王寺さんの会話(LINE?)内容。

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「あやたん、きいて」
「どうしたの?」
返事を打つと、すぐにメッセージが帰ってくる
「4Pにめざめた」
「おちつけ」
「3はまだしも4は無理だろと思っていました。穴の数的に」
「いきなりなんの話を……」(P76-77より引用)

 本当に。(苦笑)

「あやたんは、初めて好きになったキャラとかBLに目覚めたきっかけとか覚えてる?」
<中略>
「教科書に載っていた『おてがみ』のがまくんとかえるくんの関係にきゅんときた」
「あーっ、それ知ってる!」
「もうね、ふたりの相思相愛っぷりが可愛くて」
「初めての萌えが教科書とか両生類とか、やっぱあやたんはちがうわ」(P79より引用)

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 この「おてがみ」の話は後々の伏線になってる。

 それはさておき、少なくとも小学生に読ませる本ではないと思う。(苦笑)
穴の数的に、って、そんなもん説明できんわ。

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 さて

 そろそろ

 ネタバレ解禁

 します。

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 もういいかな?

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 主役の二人、八王寺さんと九條くんの共通点。
それは、どちらもシングルマザーであるという点だ。

 でも、関わり方はまったく違う。
八王寺さんは、男にだらしない母親を軽蔑している。
九條くんにとっては、、どうだろう?
今はともかく、幼稚園の頃は母親べったりな子どもだった。
今でも、関係は悪くないように見える。
(親の恋人の話とかも出てくるけど)

 やっぱりこのシリーズ、親との関係も問題になるね。

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 今作では、主人公二人が文化祭の準備をするシーンが多い。
とはいえ、男子は九條くんが中心であるが、
八王寺さんは完全に脇役。
女子の中心は実行委員の森さんであり、完璧美少女の結城さんだ。
なので、九條くんと八王寺さんがからむシーンはあまりない。

 むしろ、九條くんは結城さんに好意を抱いている
ただ、読者からみれば、「それって本当に恋か?」と見えるのだが。
相手を想うような描写はまるでなくって、
「あの結城さんを彼女に出来たら、俺かっこいい」という
俺様根性が見えてるんだよね。
まぁ、気になっている、といえば気になっているんだろうが。

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 色々あるんだけれども、そこは割愛して、
クライマックスのシーンが、すごくよかった。
事前準備シーンにたくさん書いてあったクラス企画ではない。

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 八王寺さんは、学園祭の2日目を、結城さんのお兄さんと回る。
これは、結城さんからの依頼で。超絶美形イケメンで変人なお兄さんだが、
八王寺さん的には、好みのタイプ。
(この辺、前作にも出てきている)

 八王寺さんは、結城さんに「友達」と認められていたことも嬉しい。
結城さんは、「八王寺さんは安定しているから、兄を任せられる」と。
欠点は多いけど、それを他人で補おうとしないから。

 そこで、最後に事件がおこる。
学園祭のイベントの「ビブリオバトル」に、
図書委員の原先輩のかわりに、急遽出場することになった。

 八王寺さんは、舞台の上で、今までの自分なら考えられなかったような
見事なスピーチをこなし、ビブリオバトルの優勝をかっさらう。
この時に八王寺さんが紹介した本が、「ふたりはきょうも
がまくんとかえるくんのシリーズ最終作。

 第一作目、「ふたりはともだち」に収録されている「おてがみ」は、
小学校の教科書に出てくる話。つーか、実際に聞いた覚えがあった
娘の音読の宿題で。w
 おてがみが来ないことを嘆くがまくんのために、
かえるくんががまくんに、おてがみを書いた。
ただ、配達を頼んだのがかたつむりだったので、w
がまくんは、かえるくんと一緒におてがみが届くのを待った、という話。

 八王寺さんのスピーチのラストを引用する。

「ここには五つの短編が収録されているのですが、『あしたするよ』
 『たこ』『がたがた』『ぼうし』と続いて、最後のエピソードは
 『ひとりきり』というタイトルなのです」

「ずっと、ふたりは仲良しだったのに、ここにきて、まさかの『ひとりきり』
 という展開。いったい、ふたりのあいだに、なにがあったのか……。
 そして、ひとりきりになったあと、伝えたいと思ったことは……。
 気になる方は、ぜひ、読んでみてください」

.

 引用終わり。

 気になったから、図書館で全部借りて読んだ
まんまと、八王寺さんの発表に負けたわ。w

 で、これに「挑発」された九條くんはミスターコンテストで優勝する。
もともと、ミスターコンテストでは、九條くんは別の特技を行う予定だったが、
直前で(八王寺さんの、文化祭の熱気にあてられて?)変更する。
 これも、まさに「青春!」って感じだ。さすがにここは隠しておくが、
優勝した後のラストシーンがすごくよかった。

 九條くんと八王寺さんは、(今までのシリーズと違って)
最後までカップルにならない。
むしろ、途中まではこの二人、険悪な雰囲気ですらある。
それが、文化祭、(あと、結城さんのお兄さん)にあおられて、
八王寺さんが殻を破って輝く。
 それにあおられて、九条君も、今までの彼ならば決してしない
ようなことをやって、喝采をあびる、と。
最後は、お互いを認め合う形で終わる。

.

 今作の欠点をあえて言うならば、
どこにも、シリーズものであることが書かれていない」点だ。
なので、この本だけ読んだ人は、どう感じるだろうか?
 もちろん、今作だけでも楽しめるとは思うが、
(嘘をつきはじめた頃の)笹川くんと、結城さんの関係は、
見ててもわからないんじゃないかな?

 さて、今後はどうなるのかな。
シリーズとして続けていくんだろうか?
前作とは違って、この二人なら続編が書けるんじゃないかと思うが。
殻を破った二人のその後とか、見てみたいな。

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