「週刊現代」は死人が出ても売上を優先する。
もう、あちこちで話題になってるから、
あえて書くこともないかな、と思っていたんだけれども、
自分とこにも被害がでてきてしまったので。
週刊現代の問題の記事について。
「ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48812
.
以前にもゲンダイは似たようなことを何度もやってる。
現場の薬剤師としては、
「え、週刊現代が書いてることなんて、信じる人いるの?」
くらいなんだけど、実際に影響があるから困る。
で、薬剤師や医師が、そんな患者さんの相手をする訳で。
余計な仕事を増やしてくれるな、ゲンダイ。(苦笑)
.
実は、この一連の記事の問題点、
ほとんど、見出しだけなんだ。
この「医者に出されても飲み続けてはいけない」というフレーズ、
これが本当に大問題になる。
記事の内容は、私がみた限りそれほどおかしくない、
むしろ正しいことの方が多い。ただ、その情報から、
「飲み続けてはいけない」という結論にはならないだけで。
今回のシリーズ、ようは売上高の高い薬に絞ってdisってるのね。
で、その批判は当たっているところも多い。
例えば、製薬企業のドル箱になってるARBという種類の降圧薬。
これ、ゲンダイがどうやって批判しているのか、というと、
「薬価が高い、もっと安い薬を使え」ってことなの。
少なくとも、この主張は賛成するよ。
「飲み続けてはいけない」ってか、「別の安い薬に変えなよ」ってことだから。
.
ほかにも、
第3世代経口セフェム(これディスってるの岩田先生だったw)とか、
花粉症にケナコルト(注射)とか、セレスタミンとか。
確かに、あんまり出して欲しくない薬も多い。
アボルブに関しては、浜センセーが暴走してるだけだけど。(苦笑)
.
ただ、今回のゲンダイでどうしても許せなかったのが、
プラビックス、イグザレルトまで含めてひとくくりで
「飲み続けてはいけない」と見出しで煽ってしまったことだ。
他の薬はまだしも、それだけはあかんやろ。
.
プラビックス、イグザレルトは、脳梗塞の予防に使われる薬だ。
これ、ゲンダイの記事を信じて勝手に薬をやめた患者さんが出ると、
マジで命に関わるよ。
本当に、何人か死んでてもおかしくないよ。
ゲンダイさん、それ責任取れるのか?
しかも、イグザレルトに関してのコメントは、
「こわごわ出している医師もいる」ってんだから、ふざけてる。
ナニそれ?こわごわ出すのが問題なの?
むしろ、慎重にやってる、とほめるべきじゃないの??
どんな薬だって副作用はあるし、確かにこの系統の薬は
リスクが高いよ。でも、服用しない方がもっとリスク高いんだよ。
ゲンダイさんは「薬で死ぬのはダメだが、病気で死ぬのは仕方ない」
って思ってるのか?
.
それこそ、医療経済の観点からイグザレルト批判するならまだわかるわ。
ワルファリンの方が安上がりなのは確かだから。
でも、ゲンダイさんが思ってるほど医師や薬剤師が添付文書も相互作用も
知らない馬鹿ばっかりだったら、
それこそワルファリンみたいな薬、危なすぎて使えないだろう?
.
今回、週刊現代の見出しだけが、新聞広告で載ったらしい。
まだ、全文をじっくりと読んでもらえれば、
見出しだけで煽ってることが理解できるかも知れないが、
新聞広告で見出しだけ見た人が、不安に思って薬をやめるかも知れない。
実際、電話は何件かかかってきてるからね。
ゲンダイさんは、自分たちのやり方で死人が出ることを認識してるか?
週刊誌なんて、煽ってナンボ??あとは読者の自己責任???
それって、人命よりも雑誌の売上優先ってことだよね。
製薬企業よりも、よっぽどタチ悪いわ。
.
患者さんは、「絶対に」自分の判断だけで薬をやめないように。
どうしても不安なら、医師と相談して決めてもらいたい。
ちなみに、先ほどリンクしたゲンダイさんの記事は、
こう締めくくられている。
以下、引用
.
まずは自分のお薬手帳を見て、なんとなく安易に飲み続けている薬が
ないか確かめよう。そのうえで、信頼できる医者と相談しながら、
飲み続けるべき薬、やめてもいい薬を仕分けする
——それが健康への第一歩だ。
.
引用終わり。(改行位置変更、強調は引用者)
この文章には、全面的に同意する。
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コメント
「「薬で死ぬのはダメだが、病気で死ぬのは仕方ない」
って思ってるのか?」
については・・・
・死に直接関わり代替の治療法がないときに限り,薬で死ぬのを許容としたい.つまり基本的には薬で死ぬのは許容できない.
・患者自体に自分の治療の選択権限があるのであるから,患者の選択により病気で死ぬのは仕方ないといえる.つまり基本的には病気で死ぬかどうかの選択権は患者にある.
さて,患者を煽ったものにどこまで責任が及ぶかというと・・・まずは情報処理できない患者に責任があり,特別な場合には煽ったものに責任がある・・・
煽られた患者を止められなかった医師の責任は?.医師の責任範囲はインフォームドコンセントまでだから・・・
やはり患者が自ら学びその意志と理解の範囲で薬を使わないと決定したのであれば,病気で死ぬのは仕方ないのでは?.ただ患者を死なせないようにするのは医師のエゴであろう.
ただ,患者が治したい意思をまず示し,従属的にその薬は嫌だというのなら,医師に責任があろう.
投稿: | 2016-06-10 12:15
>・死に直接関わり代替の治療法がないときに限り,薬で死ぬのを許容としたい.つまり基本的には薬で死ぬのは許容できない.
これは難しいですね。というか、確率論なんですよ。
例えば、100人の患者さんがいて、
薬を服用すれば90人が助かる、とします。
残りの10人は薬を服用しても助かりません。
で、仮に100人に1人、薬が直接の原因で亡くなる、と
した場合、
全体の数をみれば、「全員薬を服用するのが正しい」です。
でも、誰か一人は薬のせいで命をおとします。
その「一人」が誰になるかは、事前にわかりません。
予防接種の副反応などもそうなんですが、
全体の利益をみると、ごくごく少数の不利益は許容していただく
しかないんです。
(もちろん、病気や薬によっては補償がありますが)
週刊現代に、法的責任はありません。
道義的にどうよ?と言っているだけです。
専門家から見れば、この煽りで死者が出る可能性は、
それなりの確率である、と予見できます。
万が一、医者が週刊現代の見出しに騙されて、
自分の患者さんの処方薬をなくしてしまって、
その結果死人が出た場合、
これはその医者の責任が強く追及されるでしょう。
ですが、週刊誌は「所詮」週刊誌ですよね。
出版社側から言えば、そんなことを気にしていれば
何も記事にできなくなる、と言うでしょうし。
そもそも、記事を最後まできちんとよく読めば、
ちゃんと主治医に相談しろと書いている訳で。(苦笑)
週刊誌やスポーツ新聞が見出しで煽るのは、、
当たり前なので、信じる方がどうかしてる、
と思うんですが。
それでも、薬局の電話はなるんです。(泣)
医師や薬剤師は、変な週刊誌に煽られても
自分の判断で服薬を中止しないように、常日頃から
患者さんを教育する必要がある、ということですね。
投稿: kitten | 2016-06-13 17:19
突然コメントすみません。
認知症の母が、新聞の下の週刊現代の「ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬」の見出し広告に、自分の飲んでいるアリセプトが出ていて、勝手に飲むのを止めていた。
何度も、説明しても疑ってるし、医師や薬剤師に説明してもらっても、説明は忘れても週刊現代の見出しだけは覚えている。
正直、介護している私は週刊現代が憎い。
母が同じことを何度も言うのは許せるけど、認知症の進行が進んで、仕事も辞めたりしたら生活の責任を取ってくれるのか!
で、私は週刊現代に電話した。
記事を書くのはいいが、判断の出来なくなった認知症のアリセプトだけは、表紙から外してくれと。
第3弾からは、表紙から外れていたので、一安心している。
投稿: | 2016-06-19 15:02
この程度の煽りで患者が踊るのは薬剤師がその使命を
果たしていないからともいえでるであろう。
薬剤師がうわべだけの指導、確認しかしておらず患者
からの信頼を得ていないことの証左。
ま、踊る人が一人もいないほど国民に知識があるので
あれば薬剤師は全員廃業ですけどねw
投稿: とおりすがり | 2016-06-20 01:33
>とおりすがりさん
コメントありがとうございます。
今回の件、ショックを受けた薬剤師や医師も
少なからずいるんじゃないかと思います。
「週刊誌の見出しなんかで煽られるほど、
自分は信用が無かったのか?」って。
予想以上に、新聞広告ってインパクト強いんですね。
活字に対する絶対的な信頼感みたいなものを
持ってる人もいます。
ただ、電話でもこっちに聞いてくれるだけまだマシですね。
とにかく、「勝手に止めるのは危ない」と伝えられますから。
一番怖いのは、相談もなく勝手に薬をやめる人です。
多くないことを祈ってますが・・・。
投稿: kitten | 2016-06-21 00:05