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「神様ゲーム」

最近読んだ本の紹介。

神様ゲーム」(麻耶雄嵩)
(リンク先はamazon)

 一応、子ども向けの推理小説シリーズのはずだ。
でも、実際にはこれ、子どもに読ませてはいけないと思う。(苦笑)
2006年度版「このミステリーがすごい」5位。

 この作家さんは、本格ミステリ作家である。
他の作品は読んだことないけれど。

私は、ミステリは好きなほうだと思うが、
ミステリしか読まない訳ではないので。
東野圭吾とか、湊かなえとかは比較的よく読んでるけど。

 ようは、本格ミステリ作家が、(一応)子供向けに書いた推理小説。
なんせ、主人公は小学4年生の男の子
しかも文字は大きめ。ほとんどの漢字にふりがながついている
なら、小学生でも読めるのか、と思いきや、
全然そういう訳ではない。w

 いや、娘(小4)でも読めるかな?と思って
図書館で借りてみたんだけれどね。これは読ませちゃダメだった。

.

 ミステリなんで、ラストのネタばれは避けておくけど、
ラストを読んだ感想と、それまでの展開について。

.

 とりあえず、挿絵が怖い
あえてこんな絵柄を使わなくてもいいのに、と思うほど。

 主人公は黒澤芳雄、小学校4年生の男の子。
最近、この町で猫を残虐に殺す、というショッキングな事件があり、
その解決を目指して、「浜田探偵団」が活動する。

「浜田探偵団」は、浜田町に住んでいる子ども5人による組織。
とある廃屋を秘密基地にして活動している。
小学校4年生の男の子3人と女の子2人。
少しは恋愛感情みたいなのも出てたりして、微笑ましい。
(主人公の芳雄は、ミチルをいいな、と思っているとか。)

 といっても、子ども向けなのはここまでだ

.

 物語のカギを握るのは、無口な転校生、鈴木太郎。
掃除当番で二人きりの時に、芳雄は鈴木くんと雑談をするんだけど、
鈴木くんは、「僕は神様なんだよ」という。

 芳雄は、当然信じないけれども、笑い飛ばすようなこともしない。
「これは、何かのゲームなのかな?」と思い、
 (自称)神様である鈴木くんと会話を続ける。
 本当に神様だったら、こんなことを知ってる?と
鈴木くんに質問を続ける。

 鈴木くんは、これに「神様として」完璧に答えを返してくる。
例えば「沢田先生って恋人はいるの?」とか。
これに対する答えは、「畠山先生と不倫している最中だよ」

 いや、この時点で子供向けとしてどうよ、と思った。(苦笑)

 本当かどうか分からないけれども、簡単に真偽は確認できない。
芳雄は、結局どうやっても鈴木君を言い負かすことはできなかった。
内心ではゲームだと思いながらも、勝てない。
そこで、猫殺しの犯人を聞いてみた。

 すると、鈴木君はあっさりと猫殺しの犯人の名前を伝えた。

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 さて、芳雄目線でなく、読者の目線でみてみると、
この鈴木くん、とてつもなく高度なことを話しているのがわかる。
とうてい小学4年生がこんな考えをもつことは不可能だろう、と
言うレベルの話である。
 つまり、読者は芳雄よりも「こいつマジに神様なんじゃね?」と
思わせられる。
そういう仕組みになっている。

 鈴木くんと話すのは、物語の最後まで芳雄だけ、だ。

.

 さて、この後、猫殺しの犯人は最終的に捕まるんだけど、、
それどころじゃない事件が「浜田探偵団」を襲う。

 なんと、本物の殺人事件

しかも「密室トリック」もの。

.

 この辺から、子ども置いてけぼりの展開になってくる。
いや、こんなの子供向けに書いちゃあかんやろ、という話。

 詳しくはネタバレになるので伏せるが、
最終的に犯人は、神である鈴木君の「天誅」を食らって終わる。
鈴木くんは、そんなことまでできるのだ!

.

 さて、最後まで読んだ感想を。

これ、ミステリとしては、あり得ない、といってもいいかも。
密室トリックまで使っておきながら、真相は藪の中。
だって、探偵役が存在しないんだもの。
 一応、物語上の探偵役である主人公、芳雄は推理する。
しかも、子どもらしからぬ推理力で、それが正解かも、
と思わせるだけの説得力はあった。
「神」である鈴木君の情報があったにせよ。

 しかし、ラストで「神」はこの推理を否定するのである。
しかも、伏線なしで。
伏線なし、種明かし(解説)なし、天誅で終わるので、
この作品、ミステリとしては成立していない。

.

 じゃ、どういうことか、というと、
それは、この作品が「神様ゲーム」というタイトルであること。

つまり、読者は、この「神様」である鈴木君を信じるのか?
という問いかけなんだろう。試されているのは、芳雄だけでなく
読者も、作者からの「神様」という設定を受け入れるのか、
否定するのかを問われているんだ。
 それこそが「神様ゲーム」というタイトルの意味だろう、
と思った。

.

 実際のところ、鈴木くんの言った事に全く嘘はない。
それどころか、ほぼ不可能なレベルの未来予知までやってる。
ただ、理論的裏づけは全く存在しない。
でも、作品中では、鈴木くんは神様としか思えない。
(というか、そのように描写されている。)

 でも、神様は最後に理解不能な回答を示して終わる。
「本格ミステリ」の概念そのものをひっくり返そうとしてるのか?

.

 「そんなに難しく考えることはないんじゃない?」と思われるかも。

確かに、これは(形式上は)小学生向けの推理小説だからね。
でも、実際はミステリファンに向けての話だと思うなぁ。

 いわゆる「名探偵」だって、神様と紙一重だよ?w

.

 さて、最後にもう一度警告しておく。
この本、少なくとも小学生には読ませない方がよい。

 殺人事件そのものがありえないほどショッキングであり、
犯人も動機も、(小学生向けでは)ありえない。
さらに、鈴木くんの「天誅」がトラウマになるほど「怖い

 これ、娘に読ませたら絶対に泣くと確信する。
それくらい怖い。(汗)

 興味のある人は、ホラーを読むつもりで読んでみて欲しいと思う。

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コメント

文字が大きくてふりがなもありますが、子ども向けと見せかけて、実は全くそうではない系のミステリーですね。
これが10年前に発売された中で一番ちょっと変わったミステリーなので、たった1話切りのテレビドラマ化や映画化も是非してくれたら面白そうで一度は見てみたくなる人も増えると思います。

投稿: サイナイ | 2016-07-20 06:22

>サイナイさん

 映像化は面白いですが、年齢制限あった方がいいかも。(苦笑)
ミステリとしてよりは、ホラーとして作った方がいいと思います。

投稿: kitten | 2016-07-22 21:56

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