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「ラブ・ケミストリー」

 最近読んだ本の紹介。
図書館で目についたから借りてきた。

ラブ・ケミストリー」(喜多喜久)

 リンクはアマゾン。

 借りるまで知らなかったけれども、
2011年、第9回「このミステリーがすごい」大賞優秀賞
ってことで、一応、ミステリーという分類になるらしい。

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 ただ、これはミステリーなのか・・・?
ミステリー成分よりも、ラブコメ成分の方が多い。
さらに、「ケミストリー」なんだ。
 ケミストリーは化学。それも有機化学の話が
ふんだんに出てくる。

 舞台は(たぶん)東大の農学部。有機化学系研究室。
主人公の藤村君は典型的な理系男子。
モテない、というか根本的に女性に興味がなかったはずの
研究バカ、ただし、天才。

 構造式をみただけで、合成法が閃いてくるという能力持ち。
これがどの程度の能力かってのは非常に説明しにくいが、
有機化学の端っこをかじった人間から見てみると、
「チート」レベルの能力である。
 「チート」でわかりにくければ、「神」でもいいかも。
ようは、反則級の能力なんだけど、
その能力が、「恋」によって消え失せてしまう。
結果、かつてない大スランプに陥った。

.

 そこに登場するのが、死神・カロン。
そう、この話は化学を題材にしながら、むしろファンタジーなんだ。

 この物語は、余命6か月と宣告された「依頼者」が、
カロンに対して、「藤村君のスランプを解決してほしい」と
お願いする。

 カロンは、恋が叶えば、失われた能力は回復するだろう、と思い、
恋愛初心者にもほどがある杉村君にとりついて、恋愛成就を目指す。

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 非科学的な存在であるカロン。彼女の能力もすごい。
カロンにできないこと。それは、
人の命を奪うこと、精神に干渉すること、意思を捻じ曲げること

 なので、藤村君は恋を叶えるために、
「想い人の心を操る」ことは、カロンにはできない。

 でも、逆に言うと
それ以外のことなら、カロンは何でもできる、と言う方が近いかな。
なにせ、人の記憶を操ることができる。これもチート級の能力だわ。

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 で、この話はミステリーでもある。
なにがミステリーかというと、プロローグに出てくる
「余命半年の依頼者」の正体だ。これが読者にはわからない。
杉村君のことを気にかけているヒト、としか。

 ただ、ミステリー成分は少な目。
ネタバレは避けるけど、カロンの能力が半端ないから、
かなり強引に解決にもっていける、とだけ。(苦笑)

 結末は……、理系男子としては、ストンと腑に落ちた。
でも、そうでない人にとっては、「???」かも知れない。
今までの流れは何だったの?と。
それは、藤村君の研究者としての本性と、
カロンの半端ない能力の結果だな。w

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 「ラブ・ケミストリー」は
ミステリー風味で、ケミストリーという理系スパイスの利いている
「ラブコメ」ストーリーだ。

 作者は、東京大学薬学部卒。現在は製薬企業で働いている。
なるほど、ケミストリーの話をリアルに描けるのは当たり前だ。
本職なんだから。

 作者のほかの作品もいくつか読んだけど、
化学、ミステリ、ラブコメ成分は共通していた。

 私は、ミステリも好きだけど、ラブコメの方がさらに好き。
しかも理系人間(つーか薬剤師)。
こんなに、私の好みにぴたりとハマる作家は、他におらんやろ。w
むしろ、私が読まないで誰が読むんだ、と。ww

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 続編?で、同じような作品が出ている。
「猫色ケミストリー」

 今度は、突然の落雷によって大学院生の男女、と猫の
精神が入れ替わってしまう、という、ファンタジー。
つーか、ラブコメとしては王道じゃねーか。
人格入れ替わりに猫を含むのは珍しいと思うけど。
(女の子→猫、男の子→女の子。猫→?)
で、猫の中に入った女の子と女の子に入っている男の子は、
なぜかテレパシーで会話が通じるという、非科学的な話。w

 王道だけあって、ラブコメ成分が高め。
謎解きに少しだけ化学が絡んでくるけどね……。
20年前に受けた有機化学の授業を思い出したわ。

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 今のところ、図書館で借りて読んでいるけど、
いずれ文庫で買いなおすと思う。
なんというか、こういう「好みど真ん中」な作家さんは
私のような人間がちゃんと応援しないといけないんじゃないかと。w

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