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世界フィギュア、羽生「神」の再降臨と、戦いを挑んだ宇野「鬼」

 スポーツから。

フィギュアスケート、今季の集大成である世界選手権が行われていた。
来年はオリンピックシーズンなので、今大会の結果で出場枠が決まる。

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 男子は間違いなく3枠取れると思っていたし実際そうだったけど、
女子はエース宮原のケガによる不出場が大きく、3枠確保できず。

 ただ、樋口や三原といった新しい顔が出てきている。
特に三原はフリーで大きく得点を伸ばして最終的に5位。
フリーの技術点だけなら1位のメドベージェワに続く2位の点数。
演技構成点でカナダの2選手に抜かれているけれども、
これは、三原がショートの順位が低かったから、というのもあるし。

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 しかし、結果として2枠になったのは非常に厳しい。
今のところ、宮原が1枠確保。2番手は三原だけど、
今季世界ジュニア準優勝の本田真凛も有力。
もちろん、樋口新葉にもチャンスはあるし、
本郷理華の巻き返しもあるかもしれない。

 もう一人、浅田真央の最後の挑戦も始まる。
もちろん、現状では日本代表には程遠いけれども、
ベストコンディションでしっかり準備できれば……。
まだまだチャンスはある。

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 しかし、ロシア勢も層が厚い。
ジュニアには、世界ジュニア優勝のザキトワもいるし、
メドベージェワはこの二年、敵なし状態だ。
 ソチ金メダルのソトニコワ、15年世界選手権優勝のトゥクタミシェワ
あたりが沈黙している(リプニツカヤは名前も聞かなくなった)のに、
他にもラジオノワ、ポゴリラヤといった選手がいる。 

 カナダも今大会でオズモンド銀、デールマン銅メダルて、3枠獲得。
アメリカ、ロシア、日本の3強の構図が崩れた。

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 女子の話はこれくらいで、注目はやっぱり男子。

羽生はショートプログラムでジャンプにミスでてまさかの5位
宇野が100点超のベスト更新で2位発進となった。

 羽生、ハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャンが一昨年までの3強。
今年は、その3人に10代のボーヤン・ジン、ネイサン・チェン、宇野昌摩という
若手4回転ジャンパーが立ち向かう、という構図だった。

 最終グループのこの6人。まさしく今年の頂上決戦にふさわしい顔ぶれ。
この6人の次、7位のジェイソン・ブラウンが269.57点なのに対し、
6位のネイサン・チェンが290.72と、20点以上の差がついている。

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 昨年のボーヤン・ジン。そして今年の宇野昌摩、ネイサン・チェンという
3種類以上の4回転ジャンパーの台頭に大した、旧3強の対応。

 世界選手権2連覇中のハビエル・フェルナンデスは、4回転の回数を増やさず、
4回転の質で勝負する戦術に徹した。これは、昨年の「神演技」の羽生と同じ。

 今まで1種類しか飛んでいなかったパトリック・チャンは、質をそのままで
4回転の数を増やした。結果的には、フェルナンデスとほぼ同等の戦術になる。

 羽生は、昨年の2種3本から、4Loを追加した3種4本に増やして
若手に対抗しようとした。しかし、その結果として、一本あたりの質が落ち
昨シーズン出した「世界最高得点」の更新はままならなかった。

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 ショート5位だった羽生は、最終グループ1人目。再び神として降臨した。
ノーミス、ほぼ完ぺきな演技で、フリーの世界歴代最高223.20を記録
合計321.59点というとんでもない点数で、他の5人を待つ。

 この点数は、「3種4本の4回転のプログラムで、かつ、質も高いジャンプ」を
そろえた結果である。

 昨シーズンの羽生の戦術を追いかけたフェルナンデスとチャンを
4回転の回数で突き放し、自分以上に4回転を跳ぶ若手たちには、
その質と表現力で突き放す。

 フェルナンデス、チャンはミスが出てしまい脱落。

ネイサン・チェンは4回転6本に果敢に挑戦したが失敗。
出来栄え点が稼げなかったし、
どうしてもジャンプ偏重になり、芸術面が評価されない。

 ボーヤン・ジンはノーミスの素晴らしい演技をした。
それでも、ジャンプの質はまだ羽生に及ばないし、
演技構成点ではまだまだ羽生と10点以上の差がある。

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 羽生「神」の再降臨に、抗う術もなく吹き飛ばされたライバル。
そこに、ただ一人立ち向かったのが、同じ日本人である宇野昌摩。

 鬼気迫るような演技内容から、私は「鬼」と表現している。

 若手4回転ジャンパーの中では、表現力で突き抜けている
憧れは、高橋大輔という選手だし、実際に魅せられてしまう。
演技構成点ではまだ、羽生に届かないまでも、10点もの差はつかない。

 羽生が97点、ミスの出たフェルナンデス、チャンが94点台。
宇野昌摩も、94点と非常に高い得点が出ている。
ボーヤン・ジンは86点、ネイサン・チェンは84点台だ。
若手の中で、表現力に突き抜けているという証左だ。

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 つまり、4回転の数において、チャンとフェルナンデスは届かない。
ネイサン・チェンとボーヤン・ジンは表現力の点で相手にならない。

 両方で羽生「神」に対抗できるのは、宇野昌摩しかいなかった、という訳。

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 実際のところ、宇野はショートで羽生を上回っていた点数もあり、
最終点数で羽生とわずか2.28点差の2位だった。
最終グループの6人の中でも、この日本人二人が抜きんでていた。

 宇野は、まだジャンプの質では羽生に届かない。
演技序盤の2回の4回転で比べてもわかる。

 羽生は4Lo、4S。基礎点合わせて22.5点。GOE(出来栄え込みで)で+27.64。
宇野は、4Lo、4F。基礎点合計は24.3点。GOEを足すと26.87。

 基礎点は宇野の方が高い(4F>4S)のに、GOEで逆転されている。

 ちなみに、ボーヤン・ジンまで含めた上位3人。技術点の基礎点はほぼ同じ。
(羽生103.43、宇野104.74、ジン103.70)こっから、GOEで差がつく。

 ボーヤン・ジンが+15.24.宇野が+15.31.羽生が+22.71.

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 ただ、宇野は一つ失敗ジャンプがあった。3つ目の3Lzでエッジが不明瞭で
着氷が乱れ、GOEが大幅(-2.1)にマイナスされている。
もし、クリーンな3Lzを跳んでいれば、優勝は宇野だっただろう。

 末恐ろしい19歳だ。
今年のプログラム、ブエノスアイレス午前零時は、すごく印象的だった。
ジャンプの着氷の足の運びも天才的にうまいと思う。
これを着氷できるの?という体勢からでもきれいに降りてしまう。

 来年どうなってるか。打倒羽生の一番手は、宇野昌摩だろう。

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 と、ここまで宇野を称賛してきたけれども、
やっぱり、羽生結弦はすごい、すごすぎる。

 若手ジャンパーに対抗すべく、4回転の種類を増やした。
さらにそこからジャンプの質を昨年並みに引き上げた。
それが「できる」という自信があればこそ、の戦略だろう。

 他の選手たちは、来年、どういう戦略に出るかな?
フェルナンデスは、4回転をさらに増やせるか?チャンはもう厳しそうだ。
今シーズン序盤の不振から復活したボーヤン・ジンはどうする?
ネイサン・チェンは、もう全てのジャンプを3A以上にするくらいの勢いだ。

 今年の羽生の域にまで達するのも非常に困難。神に挑むようなモノだ。

 さらに恐ろしいのが、この羽生「神」は、まだまだ進化することを考えている。
他の選手の視線から見るともう、心が折れそうになるわ。w
なに、その無理ゲー。(苦笑)

 宇野は、今回の世界選手権で、「戦える」自信をつけたと思う。
羽生だってミスをすることもある。合計点でたったの2点差だ。
今回は勝てなかったけれども、本当にもう一歩、あと一歩だった。

 日本男子フィギュアの、この二人は、もうヒトじゃないでしょ。
鬼神、妖怪?神?とにかく人外。w

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 今回の世界選手権は、伝説に残るような試合になった。
果たして、来年、オリンピックはどうなるのか。
現時点で日本勢がリードしたことは間違いないだろう。

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