「異世界薬局」
最近読んだ書籍の紹介。
「異世界薬局1」(高山理図)
https://www.amazon.co.jp/dp/B01AXD9RPC/
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よくある異世界転生ものファンタジー。
これも、「小説家になろう」サイトからの作品。
このサイト初の作品は「なろう系」の作品と言われていて、
素人による駄作も多いんだけれども、稀にすごいのが入ってる。
ネット発の作品で、私が最初に読んだのは「まおゆう」だけど、
今思えば、あれが結構典型的な話かもしれない。
現代の知識を、そのまま中世風ファンタジーに移植して
活躍する、という話なので。
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最近読んでいるのが、「本好きの下剋上」シリーズで、
これも、本好きの女子大生が中世風ファンタジー世界に転生して、
現実世界の知識をいかしつつ本作りに邁進する話。
正直、今回紹介する「異世界薬局」よりも、
こっちのシリーズの方が圧倒的に面白いんだけど、
非常に長い話だし、まだ完結もしてないので割愛。
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で、その手の「よくある」異世界転生ファンタジーに、
最新薬学知識をもって、中世風ファンタジーに薬剤師として転生する、
ってのが、「異世界薬局」である。
転生モノに耐性があって、薬剤師ならこれは読むしかないでしょう。(苦笑)
(転生モノはある程度慣れてる人じゃないと拒否反応おこすと思う)
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まだ1巻しか読んでないけど、なかなかぶっとんでて笑った。
主人公の能力がチートすぎる。
(※チート:プログラムを不正に改変して、自分のキャラを異常に強くすること)
現代薬学の知識があるだけでも十分ズルいのに、
物質生成から消去まで思いのまま。この世界では「神」クラスの力をもつ。
なんせ、物質名に構造式を思い浮かべればその物質を作れるっていう。
確かに、その能力がなければ現代薬学を利用しにくいとは思うけど、
それにしても反則でしょ、それ。
私が(一人で)大爆笑した、主人公ファルマの初めての薬物合成シーンを
少し長くなるが引用してみる。水疱瘡にかかった妹、ブランシュのために
抗ヘルペスウイルス薬を合成するシーンだ。
以下、引用
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物質合成はファルマの脳内イメージに完全に依存している。
だから間違いのないよう、よりリスクの少ない、つまり単純な化合物を合成したい。
アシクロビルはヘルペスウイルスのDNA合成を阻害することにより増殖を
抑える薬剤だ。その薬自体は比較的簡単な構造の化合物だった。
「プリン骨格に、非環状側の側鎖の……」
物質名、そして構造を脳裏に正確に思い浮かべる。出来上がったイメージを、
そっくりそのまま左手に伝え、写し取っていく感覚だ。構造に間違いがあっては
ならない。別の薬剤になってしまわないよう、細心の注意をはらって合成する。
ファルマの左手の、薬神の聖紋とロッテやエレンに呼ばれた疵が、
青白く発光した。
「"2-アミノ-9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)-3H-プリン-6-オン」
物質名を唱えてみる。そして次に一般名を唱える。
(”アシクロビルを合成")
.
引用終わり。(改行位置は引用者が変更)
いやこれ、ヤバイっしょ。
アシクロビルのIUPAC名を唱えるとか。こんなもんわかるやついるか、と。w
これは、薬剤師や薬学生でなければ笑えないと思うが。
物質の構造式を頭に思い浮かべてそれと同じ物を合成できるって、
どんだけヤバい能力なんだよ。ww
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ただ、残念ながら物質名が出てきたのは、1巻の中でここだけ。
あとは一般名だけになっていったし、後半になるとそれもなくなってきて、
単なる異世界ファンタジーに成り下がってしまった。
一応2巻も図書館で予約してるから読んではみるけれども、
面白くなければもういいかな、という感じ。
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作者の高山さんは医療系の研究者らしい。
そうでなかったらこんな話は書けないだろうから、当然か。
薬学系の知識を抜きにして、単なる転生異世界ファンタジーとみると、
私には駄作にしか思えなかった。ご都合主義、安直、二番煎じな感じ。
私もこの系統は時々読むだけで、詳しくはないけれども、
そっち方面が主戦場の読書家さんからみたらどうなんだろうね?
キャラのデザインが萌え系でかわいいから、そっち方面の需要はあるかも。
個人的にはその辺、あんまり興味ないので。(苦笑)
ただ、かなり尖った能力で、(一部の)同業者には受けるんじゃないか。w
色々な人が作品を発表してるので、本来なら商業ベースにのらないはずの
ニッチな本でも、出版されることがある。
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これ、コミカライズ(コミック化)もされているので、
文章読むのが苦手な人はそっちの方がいいかも知れない。
http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF00000031010000_68/
絵にされると萌え系の設定がより活かされていると思う。w
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