「きみの膵臓をたべたい」ほか。住野よる
書籍、というか作家の紹介。
(今回、ネタバレはほとんど書かないつもり)
「きみの膵臓をたべたい」という恐ろしくインパクトのある名前の小説がある。
本にとって、タイトルは大事。大したことない話でもタイトルがよければ売れるし、
どんなにいい話であっても、タイトルが目立たないと読んでもらえないことも。
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昨年読んだ中で、「なんだこのタイトル」とインパクトがあったのは、
「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」タイトルが激しくネタバレ。w
「ちょっと今から会社やめてくる」現在映画公開中。
「これは経費で落ちません!」これはちょっとタイトル詐欺だった。
「砕け散るところを見せてあげる」このタイトルじゃなきゃ読まないな。
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ちなみに、上から順におススメ。でも、タイトルのインパクトだけなら、
「きみの膵臓をたべたい」(住野よる)
がナンバーワンだろう。(リンクはamazon)
住野よる氏は、これがデビュー作になるんだけれども、
あれよあれよという間にベストセラーになり、昨年の本屋大賞2位。
この夏に映画化が決まっている。
私の感想は、「とにかくわかりやすく泣かせにくる本」だということ。
高校生の青春モノなんだけど、ヒロインは難病を抱えていて、
いつまで生きられるかわからない。
主人公は、内向的な(友達の少ない)男子高校生で、
なぜか、彼だけがヒロインの病気の事情を知ってしまうことになる。
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ちょっとご都合主義な気もするけれども。(ラノベくさいという批判もあるし)
でも、この「きみの膵臓をたべたい」というタイトルは素晴らしい。
初めにこのタイトルありき、という一発ネタかも知れないけれども、
この訳の分からない言葉に共通の「意味」をもたせるのはすごい。
西加奈子さんの直木賞作品、「サラバ」に匹敵するかも。w
あの作品でも「サラバ」は、主人公と親友だけに通じる特別な言葉だった。
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で、こんな作品でデビューして、果たしてこの人大丈夫なのか、と。
ネタ一発で終わるんじゃないかと思っていたが、ちゃんと本を出している。
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二作目は、
「また、同じ夢を見ていた」
こちらはうってかわって、小学生の女の子が主人公になる。
(この辺も、西さんとかぶるな、と思った)
おませな小学生が、「人生とは」「幸せとは」という課題に立ち向かう。
少しファンタジーが入った話だった。
(ってか、タイトルで夢オチなのがばれてるんだが。w)
ただ、小学生が読んでわかるかというと難しいかも。(苦笑)
この作品で、住野さんは、少なくとも一発屋ではないことを示した。
人によって評価の分かれるのは当たり前だけど、
むしろ、「キミスイ」よりもこっちの方がいい、という人もいると思う。
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で、三作目。これもインパクトは強烈。
「よるのばけもの」
主人公が夜になると化け物に変身してしまうという、
もはや日常どこいったよ、みたいな話なんだけどね。w
でも、昼間は普通の男子中学生だったりする。
前の二作と比べると少し読みにくかった。(嫁は断念した)
テーマが重い。こんなタイトルで、ありえない設定なのに、
テーマは「いじめ」なんだ。
もうここまでくると、ただのエンタメ作家ではないね。
私は、この話が一番衝撃的だった。
え、この人、こんな話も書けるの、と。
「よるのばけもの」は、一作目とも二作目とも全く印象がかぶらない。
それでいて、話題にはなる。まさに問題作。
(さすがに映画化は無理だろうが。w)
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で、この春に出た最新作が、
タイトル書きにくいな、これ。
なんでタイトルの最後、『「』で終わるんだろう?
(実はこれ、作品を最後まで読んでもわからんw)
小説を「書く仕事」みたいなエッセイかと思ったら、全然違う。
今度は、(少し特殊能力のある)5人の高校生の群像劇。
私の感想では、これが一番「読みやすかった」
高校生っていいなぁ。w
これは、雑誌で連載された作品らしい。
それぞれが主人公で5編、連作短編集。
京、ミッキー、パラ、ヅカ、エルの5人。
個人的には「ぱっぱらぱー」のパラが好き。
(たぶん、同じ意見の人は多いと思う)
どう見てもおかしな人なんだけど、
パラ目線の話があるので、ただの変人でないことがわかる。
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ここまで、全部図書館で読み通した。
(「きみの膵臓をたべたい」は文庫化したから購入した)
うーん、タイトルは一発屋だったけど、
この作家さんは全然一発屋じゃないよ。
全体を通して、中高生向けの作品だとは思うけれども(苦笑)
別に大人が読んでも問題ないと思う。
現在進行形で、生まれつつある作家さん、かな。
デビューから4つ全部読んで、「ハズレ」がない、というのはすごい。
次はどんな話を書いてくれるのかな。どれだけ引き出しもってるかな?
私が次回作を楽しみに待っている作家さんの一人になった。
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