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「悪の製薬」

 書籍の紹介。
「悪の製薬」(ベン・ゴールドエイカー)
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 製薬会社の闇を暴いた本。
作者は、イギリスの医師である。主に欧米の企業の話なので、
日本でどうなのかはわからんところはあるが、、
まぁ、大差ないと思う。(苦笑)
 
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 ものすごく長い本なので、簡潔にまとめる。
 
 この作者はEBM、根拠(エビデンス)に基づく医療を最上のものと信じて疑わない
ところが、そのエビデンスが怪しい薬がある。それもたくさん。
 
 一番の問題は、発表、出版のバイアスだ。
成功して、うまくいった試験結果のみ公表されて、
失敗して、薬が効かなかったデータは闇に葬られる。
 
 いや、医療の発展のためには、「効かなかった」というデータも大切なのに。
「効かなかった」というデータを消しているから、
「薬が効いている」というデータだけが残ってしまう。
 結果として、多くの薬が、過剰に評価されている。
 
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 あとは、製薬企業がいかにして、医師に薬を使わせるのか。
臨床試験での、不正、ねつ造。
本当は失敗だったのに、あたかも成功したかのような発表をしたり。
法の網の目を潜り抜けて、副作用を報告しない企業とか。
 
 また、医師の教育に製薬企業が大きくかかわっているので、
医師は薬がよく効くと思い込んでしまう、とか。
 
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 作者の書きっぷりは凄まじい。(苦笑)
 
 もうね、「製薬会社、滅びよ」とか、
MR、この世から消えろ」くらいの怒りを感じる。
 
これ、企業の人が見るとつらいだろうな。いや、反論したくなるか。
 
 ただ、作者の主張にはしっかりとしたエビデンスがある。
 
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 とりあえず、製薬企業の言うことを簡単にうのみにするな、と。
「そんなこと分かってる」っていう医師も多いんだけど、分かってない。
彼ら(製薬企業)は、医師より1枚も2枚も上手だから。
 だから作者は、医師はMR(製薬企業の営業さん)に会うべきではない、
とまで言っている。いやいや、職業の全否定だわ。w
 
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 んー、ただ、企業側の事情もわかるんだよね。
企業は利益最優先だから。利益を出すためには何でもするよね。
 
 特に、画期的新薬が非常に少なくなっている現代では、
企業は死にもの狂いだろう。
 
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 まぁ、私の意見も、「製薬企業、縮小せよ」なんだけどね。
 
 もはやこの業界は成長産業ではありえないよ。
新たな需要を喚起する、とか考えていないで、
きっぱりとコストをきりつめて合理化した方がよい。
 
 これ以上新しい薬、まだ必要か?という話。
ミクロでみれば、まだ必要な薬は多いんだけど、
人類全体のマクロでみた場合、新薬創出はもはや割に合わない事業で、
そのエネルギーは、ほかに使ったほうがよいと思う。
 
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 さて、いくつか感想。
 
 まず、製薬企業が悪い、といっても、全ての薬が悪いとは言ってない
いい薬もある(はず)。
 
ここ読み違えると、医薬品よりももっとタチの悪い代替療法とか、
健康食品とかに引っかかってしまうことになる。
 
 あれだけ、厳格にチェックしている医薬品ですら、
プレゼンやマーケティングを駆使すれば、効果が薄い薬でも売れる
いわんや、サプリメントをや。
 
 機能性表示食品とかね、もう、ちゃんちゃらおかしいレベルだよ。
あんなもん、エビデンスとは言わん。(苦笑)
でも、宣伝次第でどうにでも売れる。
 
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 あとは、状況がどんどんよくなっている、ということだ。
 
 この本の出版がきっかけとなって、いくつかの企業が情報公開に進んでいる。
特に、GSK(グラクソ・スミスクライン社)。
この本では、一番の悪役みたいに書かれていたけれども、
(むしろ、書かれていたからこそ?)
情報公開に積極的になり、優良企業になろうとしている。
 
 もう10年もすれば、もっと状況はよくなっているんじゃないかな、と思う。
 
 だいたい、そんなに完璧に悪事ができる訳ではない。
だって、この作者にはバレてしまってるんだよ?w
ちゃんと調べられたら、バレる程度の悪事が多いんだ。
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 日本でも、処方データやレセプトを基にしたら、
いろいろな現象が見えてくるんじゃないのかな?
 
 例えば、コレステロールの薬で、一番効果の高いのはどれか、とか。
欧米人と日本人で異なるかも知れないから(というか異なっているほうが多い)
日本独自のデータが欲しい。
 
 検査データとかまで、全部まとめてデータベースに突っ込めたら、
あとは、コンピュータの中だけで解析できそうな気がする。
特別な臨床検査なんてしなくても。
 
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 もっとも、しっかりとした統計の専門家が必要だけどね。
医療統計の専門家がたくさん必要になるかも。
統計こそ、大事。

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