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「コンビニ人間」

 書籍の紹介。

「コンビニ人間」(村田沙耶香)
(amazon
 
 去年、芥川賞をとって話題になった。
図書館で予約して半年以上、ようやく回ってきた。
「コンビニ人間」というタイトルだけど、
コンビニが人間な訳はなく、、コンビニを利用する人間という訳でもない。
コンビニで出来ている人間、、というと少し近いかも。(苦笑)
 
 なかなか、面白い本だった。
普段、エンタメ系の本を主戦場にしているので、芥川賞みたいな純文学は
やや苦手なんだけれども、この作品は非常に読みやすい。
中編(150pくらい)だし。
 
 まぁ、芥川賞は基本、中編か短編なんだけどね。
 
.
 
 主人公は、古倉さん。コンビニのアルバイト歴18年。
大学1年生の時にバイトを始めてるから、多分36歳。女性。
未婚、恋人なし。というか、恋人がいたことなし。
人生の半分がコンビニ店員アルバイト。
 というか、古倉さんの人生は、コンビニ店員になったところから始まる
(本人談)
 別に、壮絶な人生という訳ではない。
ごく普通の家庭に生まれ、両親からの愛を一身に受けて育っている。
でも、発想というか考え方が、世間一般の常識からかけ離れすぎていて、
自分で主体的に動くと、トラブルになる。
 なので、ひたすら受動的に、家族以外の誰とも話さない生活。
(話したら、混乱を招いてしまうだけだから)
 
.
 
 そんな彼女の運命の出会いが、コンビニアルバイト。
すべてマニュアルで、やることが決められている。
「こうすればよい」「これはよくない」という判断基準がハッキリしている。
 
 主体的に動くとトラブルを招くが、マニュアルがあれば問題ない。
また、コミュニケーションも、「できる人」の真似をすることで、
ぱっと見には、ごく普通の人に擬態している。
 
.
 
 それでも、女性でひたすらコンビニのバイト、それも18年。
就職しないフリーターにしても、30代半ばとなると、
なんかおかしい」と思われてしまう。
 
 ただ、コンビニにとっては、優秀な人材。
マニュアルはきっちり守る。シフトも入ってくれる。ミスはしない。
そんなバイトは、店にとってありがたい。
彼女は、「コンビニ店員」としては完璧に近いから。
 
.
 
 私の感想を書くと、彼女は人間じゃない
もはや、種のレベルで人間とは異なる思考回路を持つ。
(食事のことを「餌」とよぶなど。)
 
 彼女にとっては自分がもっとも輝けるコンビニが全てであって、
それ以外のものは煩わしいだけで必要ない。
 
 最終的に彼女は、自分が「コンビニ人間」という、
人間とは違う動物であると認識して、話が終わる。
 
.
 
 ただ、そんな彼女を煩わせるのは周囲の反応。
家族は、彼女のことを愛しているけれども、
「普通になってほしい」と強く願っている。
 
 彼女は、表面上は普通に見えるけれども、
30代半ばまでコンビニバイト一筋で、結婚や恋愛はしない。
友人からは、どうしたって変に思われてしまう。
そこを何とか誤魔化していたんだけど……。
 
.
 
 そんな彼女に、「恋人」ができる、という話だ。
 
.
 
 まぁ、あんまりネタバレしてもあれなのでこの辺で。
 一言でいうと、「気持ち悪い話」なんだよね。面白いけど。
主人公が人間じゃないんだからしょうがない。
 
でも、人間ではないけれども、悪い訳ではないんだよ。
 
 彼女は、彼女の論理、倫理にしたがって生きている。
それは、合理的とすら言える。決して悪人ではない。
ただ、それが周りに理解されないだけで。
 
 周りに理解されないことで、彼女は非常に生きにくい。
もう、「人間じゃないから」と理解してくれる方が楽なのに。
周りは、自分が人間であろうことを前提に、
「普通」を押し付けてくる。
 
.
 
 二つ、連想した。
.
 
一つは、RADWIMPSの曲。「棒人間

ドラマ主題歌にもなってるね。(ドラマは見てないけど)
人間そっくりだけど、人間じゃない生物の悲哀の歌。
これ、まさにコンビニ人間の歌なんじゃないの?
どっちが先かわからんが。
 まぁ、彼女は人間になりたい訳ではないと思う。
ただ、コンビニ人間として幸せに生きるのに邪魔しなければよい。
 
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 もう一つは、山本弘さんの小説。「アイの物語
人間よりもはるかに高度な思考回路を持つようになったアンドロイドの話。
「理解できないものは、退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと
 
.
 
 「コンビニ人間」を読んで、「気持ちの悪さ」を感じたってことは、
それは、この「コンビニ人間」を許容できないからなんだろうな。(苦笑)
理解できないものを許容するのって難しいよ。
 
 人と違っても、それを認めてあげる。自分の価値観を押し付けない。
言うのは簡単なんだけどね。
 

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