新型コロナに対する医薬品候補
引き続き、新型コロナに関する話題。
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もともと、コロナウイルスに対する薬は存在していない。
SARSやMERSはもちろん、普通の風邪としてのコロナウイルスも
(インフルエンザに対するタミフルのような)特効薬はない。
でも、重症化して命を落とすこともあるため、
なにがしかの対抗策は欲しいところ。
予防としてはワクチンなんだけど、これが必要になるかどうかも不明。
SARSもMERSも、ワクチンって話は出てこなかったよね。
ワクチン開発は、早くても半年くらいはかかる。
半年後の状況を想像してみよう。
全世界のほとんどの人がかかっていた場合、ワクチンは必要ない。
逆に、封じ込めにうまく成功した場合も、ワクチンは不要である。
どっちの可能性もそれなりに高いので、ワクチン開発は博打だ。
もちろん、治療薬開発も同じように博打なんだが。
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通常、医薬品の開発には早くても10年かかる。
今から開発を始めたら10年後だ。
いくら何でも、10年も待てないだろう。
そこで、今ある薬のうちで、効くのがないかな?と探しているわけだ。
うまくいけば、それなりに在庫はあるし、開発期間を短くできる。
でも、そうそううまい話はないだろうな。
薬の効き方(作用機序)を考えると効果があっても不思議ではないが、
実際に効果があるかどうかはまた別物。
「理論上効くはず」の薬が実際は効果がないなんて事例は、
吐いて捨てるほどあるんだ。
一つ、ネット上に情報があったので紹介しておく。
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今回の場合、フェーズ1はクリアしてると考えてよいので、
フェーズ2とフェーズ3の問題になる。
フェーズ2の成功率は30.7%。フェーズ3の突破率は58.1%。
単純に掛け合わせると、17.8%。
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つまり、既存の薬が新型コロナに効果がある確率は、
多めに見積もっても20%~30%程度だと言うことがわかる。
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でも、悠長にフェーズ3の試験なんて待ってられないから、
フェーズ2だけでOKが出れば承認強行するかも知れない。
それでいいかどうかの問題もある。
薬には、リスクとベネフィットのバランスがある。
どの程度のリスクをかけられるかは、その薬の効果によるんだ。
例えば、抗がん剤であればある程度の副作用は許容される。
それよりも延命効果の方が大事だとされているからだ。
では、既存薬の新型コロナに対する効果のほどは?
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ここで問題になるのは、そもそも8割の人が軽症だということ。
無症状のキャリアまで考えると、この割合はもっと高くなる。
ほとんどの人が「ただの風邪」程度の可能性が高い。
ただの風邪に対して、リスクのわかんない薬使うのか?
それって、薬害の方が病気の害よりも大きくならないか?
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以前からの「早期発見、早期検査を!」という訴えは、
効果のある抗ウイルス薬があることが前提である。
薬がないのであれば、早期検査してもできることはないからだ。
今のところ、抗ウイルス薬の候補はまだ試験すら終わってない。
よって、現時点で検査しても治療には何の意味もないんだ。
まぁ、コロナ陽性と分かれば、臨床試験に参加できる可能性はある。
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でも、臨床試験って、全員に薬のませないよ?
「対照実験」って言ってね、薬のませない人と比べる必要があるんだ。
つまり、臨床試験に参加しても、抗ウイルス薬がのめるとは限らない。
あくまで実験台であって、治療ではない。
(もちろん、抗ウイルス薬以外の治療はしてくれるけど。)
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患者さんの数が増えてきたので、いよいよ臨床試験が始まる。
でも、あまり期待しすぎないでいて欲しい。
もともと、コロナウイルス用に開発された薬じゃないんだから。
「効けば儲けもの」くらいの感覚だと思うぞ。
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