エルデカルシトール緊急事態
後発品の供給が滞っている。
昨年末の小林化工ショックに続き、
日医工も(一部)業務停止命令がでて、
全体的に後発品がやばい。
一番しんどいのは、医薬品卸だと思う。
MSさんの仕事内容が変わってしまったんじゃないかと。
欠品の対応に追われるだけで半日以上かかるとか。
まぁ、最近はこっちも慣れてきたけどね。
「そこになければ、ないですね」ってなもんだ。
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そんな中でも危険水準に達しているのがエルデカルシトール。
高齢者の骨折の予防に、骨粗鬆症に使われるビタミンD製剤なんだが、
もともと、後発品を日医工とサワイの二社しか作っていなかった。
日医工が先に供給制限がかかった。
まぁ、日医工はまともに入ってくるほうが珍しいくらいの状況なので
あまり気にしていなかったけど。
結局、大本を作ってる会社の問題?とかで、
サワイからも入らなくなった。これで、後発品全滅。
仕方ないから先発品を使えば?となるが、
こちらもいまや中外製薬一社の販売となっていた。
すでに後発品の方が圧倒的にシェアが大きいんだから、
後発品二社に倒れられたら、持つ訳がない。
結果、先発のエディロールも出荷制限。
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結局、エルデカルシトールは全滅した。
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ほぼ、どこからも何も入らない。
代替品といえば、もう一世代前のビタミンD製剤である
アルファカルシドールになるんだけど、全体的なシェアはエルデカルシトールより少ない。
こっちもあっという間に供給制限かかった。
エルデカルシトール緊急事態宣言である。
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ここまで入手に苦労した薬って、東日本大震災のときのチラーヂン以来かも。
チラーヂンは「なかったら絶対に困る」薬だったけど、
エルデカルシトールにしたって、ないと困るよ。
いきなり死ぬことはないけど、骨折のリスクが高まる可能性がある。
高齢者にとっての骨折って、死活問題だからな。
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じゃぁ、どうする?
普通、こういうときはやらかしたメーカーがお詫び行脚して、
処方元の医療機関(病院)の処方を止めてもらう。
でも、今回はうまく進まなかった。
「誰の責任?」ってのがはっきりしてないんだ。
日医工、サワイが倒れたのはほぼ同時だし、
どちらにしても、本音では「俺のせいじゃない」だろう。
先発メーカーの中外製薬にしたところで、
「完全にとばっちり」としかいえない。
でも、このままじゃもうエルデカルシトールがなくなるのは
火を見るより明らかだ。誰か助けて。
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というところで、関連学会から声明がでた。
骨粗鬆症診療に携わる医療機関の皆様へ(日本骨粗鬆症学会ほか)
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新規処方は避ける。休薬できそうな人は休薬する。
何がしかの治療は続ける。
まぁ、妥当なところだと思うが、
この措置でどれくらい持つかも分からん。
10月には供給再開の見込みがあるけれども、
そこまでどれだけ入ってくるか誰もわからないから。
私の薬局の在庫は、あと1ヶ月弱といったところ。
もって来月いっぱいだな。いれてくれないと。
で、この在庫状況は薬局によって異なる。
「もう無理!」ってとこもあると思う。
どないすんねん、と。
この辺、会社によって体力が違うからな。
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原因、ねぇ。
「全体的に余裕なさすぎ」なんだよ。
これ、10年前のチラーヂンのときも言ったよね。
無駄を省く、合理化を続けると、こうなるって。
また、薬価が低すぎるのも問題なんだって。
安定供給を続けるのに、設備投資が必要なのはわかるよね?
もう、後発品業界自体が滅びかねないんだけど。
国は、どうしていくつもりなのかな?
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