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2021年12月

#読めよ薬剤師2021

 今年も、るるーしゅさんの企画に参加する。

【2021読めよ薬剤師企画】
《目的》2021年に読んで「コレオススメ」っていう書籍を
他の薬剤師にオススメする
《日時》2021年12月30日(木)21時?
《方法》#読めよ薬剤師2021
    のハッシュタグでオススメの書籍(今年読んだもの)
    3冊をツイート(自分のブログリンクでも可)

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 1冊目。フィクションから。

臨床の砦」(夏川草介)

「神様のカルテ」で有名な夏川さんの作品。
今年初めの新型コロナの第3波に立ち向かう
長野県の医療体制を描いた、
極めてドキュメンタリーに近い作品である。

 今年、私が泣いてしまった数少ない小説の一つ
といっても、いかにもお涙頂戴といった作品ではない。

 どうやっても勝てそうにない相手に挑んでいく、
医師の気概を見せつけられるような話だった。

 ものすごく感情移入してしまったし、
政治やマスコミに絶望してしまった。(苦笑)


 このあと、ワクチン接種が始まり、
一旦は落ち着いているけれども、
またオミクロンが広がると、同じことの繰り返し?
でも、みんな経験を積んでるから、強くなってると信じたい。

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 つぎ、学術系。

その病気、市販薬で治せます」(久里健人)

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 絶対読め。

 以上。

で終わってもいいくらいなんだけど。w

今年に関して言えば、この本が断トツで他が思い浮かばない。

 市販薬に関する一般向けの書籍としては、
突出した情報量と面白さを誇る。
OTCを扱う薬剤師や登録販売者は、絶対に読むこと。

 消費者含め、みんなで意識を変えていかないといけないな。

 私はこの本を計4冊買ってあちこちに貸しているが、
順調に借りパクされていって、
手元にはすでに1冊しか残っていない。

 ……また買い足すか?w

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 最後。

がんになった緩和ケア医が語る『残り2年』の生き方、考え方」(関本剛)

 関本さんは、お母さんが有名な緩和ケア医で、
ご自身も在宅での緩和ケア医として現役でバリバリ働いている。

ところが2019年の秋、43歳で、自身がガンであることがわかる。

 肺がん、ステージ4.脳転移あり。平均余命は、2年。

 それでも、この人は自分に何ができるかを必死で考える。
自身がステージ4の肺がんでありながら、
身体や頭が動き続ける限りは、緩和ケア医として働き続ける。

「最善に期待して、最悪に備える」
「たとえ世界の終末が明日であっても私は林檎の樹を植える」

 緩和ケア医の仕事内容も解説されていて、とてもよく分かる。
自分が、家族に、世の中に何を残せるかを必死に考えている。
末期がんの患者さんに向き合う医師も末期がんにかかってるって、
ある意味で最強だと思う。

 宣告から2年が経ったが、
関本さんはまだ緩和ケア医として、働き続けている。
(つい先日、テレビでお見かけした)

 多くのがん患者さんに希望と勇気を与えるべく、
もっともっと長生きして欲しいと思う。

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 この企画への参加は2回目。
今年、毎月の読書記録をブログに書き始めたのは、
実はこの企画がきっかけである。

 いや、あとで何読んだかな?って見返すのに、
記録残しておく方が圧倒的に楽だし、
紹介文もコピペできるし。

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 とりあえず、フィクション1冊ぶち込めただけで満足。

 他の(フィクション)候補としては、
映画化もされた南杏子さんの「いのちの停車場」や、
本屋大賞受賞作で、中華風ファンタジーでありながら、
実は感染症によるパンデミックを描いている「鹿の王」とか。

 今年からレギュレーション変わってるから、
今年発売の本じゃなくてもいいんだけど、
(一応)今年発売の「臨床の砦」を優先した。

 あと、薬剤師が活躍するミステリ?
日経DIでも連載中の薬剤師毒島シリーズ第三段。
「毒をもって毒を制す」あたりも考えたけど。
こちらもコロナがテーマで、今年発売だし。

 ただ、シリーズものの3作目をいきなり紹介してもな、
と思って、断念した。

 学術系は悩む余地なし。

 もう1冊はちょっと考えたけど、
関本さんの本はご存命のうちに紹介した方がよいだろう、となった。

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 他の人がどんな本を紹介してくれるのか、楽しみ。
可能であれば図書館で借りて読むし、
どうしても読みたい本であれば、買って読んでみようと思う。

 

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2021年おすすめランキングTop20

 読書記録、小説編。

 去年は、「この一年は一番本を読んだ本」と書いたけれども、
今年はそれよりもさらに読んでいる。(苦笑)

 2016年から始めてるから、6年目になるのかな。
今年読んだ小説のTop20。
今年の目標の一つに「本屋大賞完全制覇」があったので、
本屋大賞受賞作が多くなっている。

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 2021おすすめランキング

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20位 「君と漕ぐ」(武田綾乃)
 武田さんは高校生の青春モノが多い。
 この作品は、カヌー部というニッチなテーマ。

19位 「鹿の王」(上橋菜穂子)
 2015年本屋大賞受賞作。中華風ファンタジーだけど、
 テーマはパンデミックで、実にタイムリー。

18位 「いつかの岸辺に跳ねていく」(加納朋子)
 男性視点の前半と、女性視点の後半に分かれている。
 なかなか厳しい話だけど、読後感がよかった。

17位 「滅びの前のシャングリラ」(凪良ゆう)
 2021年本屋大賞ノミネート作。(7位)
 世界が滅ぶことがわかったらどうするかな?

16位 「死にたがりの君に贈る物語」(綾崎隼)
 廃校に集まる7人、というベタな設定のミステリだが、
 別に殺人はおきない。綾崎さんらしい綺麗な物語。

15位 「八月の銀の雪」(伊与原新)
 2021年本屋大賞ノミネート作。(6位)
 地球や気象などに関係する理系の短編集。私の好み。

14位 「海賊とよばれた男」(百田尚樹)
 2013年本屋大賞受賞作。実在の人物をテーマにしているが、
 ただ金儲けすればいいってもんじゃない姿勢に好感がもてる。

13位 「お探し物は図書室まで」(青山美智子)
 2021年本屋大賞ノミネート作。(2位)
 本と仕事をテーマにした連作短編集。続き読みたい。

12位 「沖晴くんの涙を殺して」(額賀澪)
 感情を失ってしまった男の子が、余命一年の女性と出会い、
 感情を取り戻していく物語。でも恋愛とはちょっと違う。

11位 「復讐の協奏曲」(中山七里)
 幼女殺人事件をおこした御子柴弁護士シリーズ最新作。
 残りページの少なさに、ハラハラドキドキした。

10位 「本好きの下剋上 5-Ⅶ」(香月美夜)
 第5部、通算28冊目にして、いよいよクライマックス。
 全ての謎が明かされて、さあ、最終決戦へ。

9位 「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子)
 2007年本屋大賞受賞作。陸上短距離がテーマの青春モノ。
 水泳もそうだけど、リレーって盛り上がって燃えるよね。

8位 「毒をもって毒を制す」(塔山郁)
 薬剤師毒島シリーズ3冊目は、2020年3月がテーマ。
 新型コロナの流行が始まった頃の、ホテルと薬局が舞台。

7位 「52ヘルツのクジラたち」(町田その子)
 2021年本屋大賞受賞作。現代の問題てんこもり。
 誰にも聞こえない悲鳴を「52ヘルツのクジラの声」で表現している。

6位 「本日はお日柄もよく」(原田マハ)
 原田さんは、今年ぼちぼち読み進めた作家さん。
 この作品は、スピーチ、言葉の大切さが面白かった。

5位 「木曜日にはココアを」(青山美智子)
 青山さん2冊目。シドニーと東京を舞台として、
 少しずつ人が重なっていく連作短編集。

4位 「あの日の交換日記」(辻堂ゆめ)
 こちらも、話が少しずつつながっている連作短編集。
 交換日記って、昭和の遺物かな?

3位 「臨床の砦」(夏川草介)
 2021年初めの、新型コロナ第3波に立ち向かう医師たちの小説。
 読んで泣いた本は、今年これだけかも知れない。

2位 「十の輪をくぐる」(辻堂ゆめ)
 昭和39年の東京オリンピックと、現在との2部構成。
 生きづらい時代を生き抜く力を。

1位 「たかが殺人じゃないか」(辻真先)
 昭和24年の高校生が主人公のミステリーだけど、
 作者(御年88歳)の体験が反映されていて凄い。

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 本屋大賞受賞作が4つ。今年のノミネート作が3つ。
まぁ、ハズレがないよね。

 ただ、全体的に今年初期に読んだ本の順位が高いのが気になる。
1位の「たかが殺人じゃないか」は1月の始めに読んだけど、
1年間、これを超えるインパクトのある小説に出会えなかったのか。

 どんどん、新しい作家さんも発掘していきたいな。

 

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オミクロン感染拡大?


 日本では、第5波が終わり緊急事態宣言が解除されたあと、
しばらくは平和な時間が続いていた。

 でも、そろそろ平和が終わりそうだ。
オミクロン株の流入である。

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 ヨーロッパでは一足先にオミクロン株が流入して、
あっと言う間にデルタ株を駆逐したようだ。
それでいて、過去最多の感染者数を出している。

 まだわかっていないことも多いけれども。
特徴としては、

・感染力が異様に高い。
・重症化はむしろデルタより低い。

 あとは、ワクチンの効果がどれくらいあるかだけど、
感染予防効果はかなり低くなっているらしい。
重症化予防効果は残っているみたいだけど。

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 ではどうするか?
現状で打てる手としては、

・3回目接種の前倒し

くらいしかないように思える。
オミクロンが世界的に流行しているのは、
ワクチン2回接種後から時間が経っていて、
感染予防効果が落ちているのも原因の一つらしい。

 なら、3回目のブースター接種を行うのは
きわめて合理的。どうせ、することになってたし。

 大阪府では、高齢者施設を対象にして、
急遽年末年始から始めることになった。

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 もちろん、今までどおりの三密回避や、
多人数での会食を控えるのも継続した方がよさそう。
このタイミングで年末年始ってのが辛いとこだけど。

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 すでに、あちこちで市中感染が発覚している。
水際対策は、もうそろそろ無意味になるかな。

 もっとも、ある程度の時間は稼げたと思う。
今回も、日本は欧米に比べて時間的余裕がある戦いになる。
すなわち、先行して流行爆発している欧米を見ながら、
対策を練ることができる、と。

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 実際のところ、予想はしにくいんだけど。
オミクロン株の感染力が非常に高いとなると、
日本でもまた、感染爆発する可能性が高いんじゃないかな。

 ただ、どれくらいまで重症化するのかがポイント。
デルタ株よりも重症化しないのはわかっているけど。

 例えば、デルタ株の4分の1くらいの重症化率だとしても、
感染者がデルタ株の4倍いたら、この夏くらいの病床逼迫になるし。

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 欧米では、ほんの2,3週間で感染者数が激増した。
いくら重症化しにくいとはいえ、あそこまで増えるとキツイ。
感染者数が夏の第5波レベルであれば、対応できると思うけど。

 なんにせよ、楽観できる状況ではないな。

 正直、この感染拡大初期にこそ強めの行動制限かけるべきなんだけど。
Gotoトラベルとか、やってる場合じゃないだろうな。
たぶん、また延期になるんじゃないかと思う。

 ワクチンの効果がここまで減弱するとは思わんかったな。
可能なら早めに三回目接種したいけど。どうだろうなぁ。

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全日本フィギュア


 気が付けば、冬季オリンピックまであとわずか。
オミクロンが拡散しつつある現状でオリンピックやるのは
かなり危険だと思うんだけれども、、

 ま、中国ならやるだろうな。(苦笑)

 さて、フィギュアスケートの全日本選手権。
オリンピック代表決定戦でもある。
毎回、全日本は面白いけれども、オリンピックシーズンはまた格別だった。

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 まずは、男子シングル。

 昨年と変わらず、羽生、宇野、鍵山で決まり。
羽生が、さらなる高見を目指した。
4回転アクセル(4A)の挑戦である。

 羽生にとって、オリンピックはもはやどうでもいい?
すでに2連覇してるからな。もちろん3連覇目指すだろうけど。
本音としては、「それよりも4A」なんじゃないか。

 ケガで出遅れた羽生は今季初戦だった。
結果的にみると「4A以外完璧」という恐ろしい出来。
これで4Aがハマったら、340点くらいでるんじゃないか。
もうすでに生きる伝説なんだけど、これ以上まだ上がるのか。

 練習でも、一度もクリーンに降りたことはないらしい。
今回も、転倒こそしなかったものの、両足着氷でダウングレード。
4A認定はならなかった。

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 超大技なのに、ものすごくアッサリ入る。
普段の3Aのような感覚で4Aで跳ぼうとしているようだ。
本当にとんでもないな、この神は。

 普通、勝負にこだわるのなら、
「安定してから試合で使う」のが当たり前。
成功率3割だと試合では使えない。

 でも、羽生は結果度外視してるから。
たぶん、現時点で成功の可能性が0ではないんだろう。
成功率1割だとしても、跳び続けてればいつか成功するよ。

 クリーンにおりるのは難しいとしても、
回転不足だったとしても、
4Aはそのうち認定されるところまできている。
もう、すごい通り過ぎてやばい。

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 宇野くんは、直前に怪我をしていたらしいけど、
そんなことは感じさせない演技だった。
少しミスが出たけれども、圧巻の演技だったと言える。

 まともにぶつかったら、羽生、チェンにはかなわないけど、
上位二人にアクシデントがあれば、金メダルもあるなぁ。

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 鍵山くんは、初のオリンピックを決めた。
展開によっては、メダルの可能性もあると思う。
日本のフィギュア史上最強の布陣ではなかろうか。

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 それにしても、レベル高すぎだわ。
若い子がどんどん出てきている。
友野くんの演技もすごくよかったんだけど、
あの演技でも表彰台にかすりもしない。
田中刑事にいたっては……。
 時の流れは残酷だね。

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 次、女子。

 紀平梨花が欠場。悲しすぎる。
日本女子で、ロシア勢に対抗できるのは4回転跳べる紀平だけだったのに。

 結果として、女子の代表争いは大混戦になった。

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 優勝は坂本。これは、ほぼ事前の予想通りだった。
3Aや4回転のような大技はないけど、「強い」としか言いようがない。
ミスしないし、GOE高いし、表現力もある。

 最後のガッツポーズがカッコよすぎて笑った。
中身はオッサン疑惑あるな、あの子。

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 2位には樋口が入った。
13歳くらいから全日本の表彰台に上がってるけど、
平昌は出られなかったから、今回が初めて。

 樋口は、トリプルアクセルが安定してきてる。
紀平ほどではないけれども、もともとジャンプに定評があったし。
まぁ、ここまでは順当かな、と。

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 それ以下が大混戦だった。
ベテランの宮原、復活の三原、若手の川辺。
3Aをショートとフリーでそろえた川辺が、3位に入った。

 日本でも、3A跳べる選手がごろごろ出てきたな。
4回転に挑戦している選手もいるし。
本当に時代が変わったなぁ。

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 個人的には、ベテランの宮原、三原推しだったけれども。
全日本の結果だけではなくて、総合的な判断になったら
三原もワンチャンあるかな、と思っていたけど、
順当に全日本の結果通りになった。

 まぁ、三原の実績といっても微妙なところだし、
三原(や宮原)を選ぶと、年齢層がねぇ。
全員20代になってしまう。(苦笑)

 バランス的にも3人出るのなら1人は10代出したいよね。
次を見据えると。

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 ロシア勢が強すぎて、ちょっと勝負にならないと思うが、
誰か一人くらいこけてくれるかも知れないし、
そうなった時にメダル狙えるのは、坂本だろうなぁ。

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 アイスダンスは、小松原夫婦と高橋大輔、村本哉中の一騎打ち。
高橋のペアは、結成2年目とは思えないほどの躍進を見せていた。

 小松原がもってた日本歴代最高を塗り替えたし、
NHK杯では高橋、村本が小松原に勝ってる。

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 ただ、全日本ではかなだいが転倒という信じがたいミス。
アイスダンスでこけるって、あんまり聞かないんだけど。

 ぎりぎりで小松原夫婦が勝ち、全日本4連覇で初のオリンピック。

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 うん、今回は小松原でよいと思うよ。
前回出てたんならともかく、初めてだしね。

 スケート連盟としては、客を呼べて話題性のある高橋大輔を推しただろうけど、
競技、スポーツとして考えると、さすがに、ねぇ。
そこは、全日本の結果優先でいいでしょう。

 高橋は、ソチの時の選考でも、全日本で5位に沈みながら
「過去の実績」で選ばれた前歴がある。
あれがあるから、もう一回あるかな?とも思ったけど、
逆にあれがあるから、もう一回はできなかったのかもね。

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 ペアは、全日本には出てなかったけど、
「りくりゅう」が内定していた。三浦、木原ペア。
今年は、中止になったけどグランプリファイナルの出場権まであり、
日本で初めて、「トップ選手」のペアなんじゃないかと。

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 強いペアがいると、もちろんペアでのメダルも考えられるけど、
団体戦も違ってくると思う。

 今まで、日本は男女シングルの厚みで団体戦戦ってきて、
ペアとアイスダンスが弱かった。

 でも、強力なペアがいる。
さらに、アイスダンスも強化されてきている。
これ、団体戦で充分戦えるようになってきてるよ?

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 アイスダンスは、やっぱり高橋大輔の力が大きいよ。

ペアもアイスダンスも、シングルからの転向組が多いけど、
高橋に注目が集まると、
最初からペアやアイスダンスする子が出て来るかも。

 かなだいは、オリンピックには出られないけど、
四大陸、世界選手権の代表には選ばれてるし、
そっちで思いっきり活躍して欲しいと思う。

 

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読書記録 2021.11

 2021.11の読書記録。

直近一ヶ月の読書記録(読書メーター)

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 11月は39冊読了。これで年間472冊。
今年の目標、500冊まで1ヶ月で28冊でよい。

小説(新規)20冊、小説(再読)5冊、
学術・ビジネス 8冊、エッセイその他6冊。

 数が少な目だったせいか、
何を紹介しようかちょっと悩む。
読了数が多いと、自分に記憶に残りにくいんだけど、
読了数が少ないと、面白い本を見つけられない、という
ジレンマがあるな。

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 フィクションから。

たゆたえども沈まず」(原田マハ)

 原田さんの作品を紹介するのは、今年2回目になる。
今年、ちびちびと読み進めている作家さんの一人。
「本日はお日柄もよく」がよかったので、
他の作品も読み進めていた。

 原田さんといえば「アート小説」らしい。
小説なんだけど、題材はモダンアート。
少し前に「暗幕のゲルニカ」を読んだけれども、
これはピカソが題材だった。
 ピカソがいかにして「ゲルニカ」を描いたのか。
そしてそれが、どのように評価され、扱われたのか。
スペインの歴史とともに書かれた大作だった。
(もちろん、フィクションも含まれているだろうが。)

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 で、この「たゆたえども沈まず」では、
ゴッホをテーマにして書かれている。
私は知らなかったけど、
ゴッホは生前、ほとんど評価されていない。

 今でこそ、私のような門外漢ですら名前を知っているほど、
世界に名を残している芸術家なのにね。

 ゴッホと、当時、浮世絵をヨーロッパに紹介していた
日本人(これは実在の人物)との交流(交流はたぶんフィクション)から、
ヨーロッパの印象派と日本の浮世絵の関係やら、
当時のフランス美術界の状況が描かれている。

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 私は、そもそもゴッホが若くして死んだことすら知らなかった。
知っていたら、読み味が変わっていただろうなぁ。
ゴッホの有名な作品も、作中に数多く登場するし。

 私は歴史が好きだから、こういう話は好きだ。
私のように芸術に疎い人間でも、
「たまには美術館とか行ってみようかな」
と思わせてくれる、そんな小説だった。

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 次、学術系。

伝え方の処方せん」(油沼)

 油沼さんは、薬学系のマンガを描かれている方で、
ご自身は薬剤師ではないんだけれども、
バックに薬剤師のブレーンがたくさんいるらしく、
そういう作品をいくつか描かれている。

 いわば、薬剤師ネタのコミカライズ担当作家?

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 患者さんへの服薬指導で、
「こう伝えたらいいよ」というポイントを教えてくれる本。
漫画で。(ここ大事)

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 私の感想は一言。「薄いよ!」
いや、もっと情報量くださいよ。高いよ。
といっても、これはあくまで「私の」感想。

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 どういうことかというと、
そもそも私は本を読むことを苦にしない。
 活字を大量に読めるので、
こういう情報は漫画ではなくて文章で欲しい。
だって文章なら、もっと少ない紙でもっと大量の情報を
読み込めるんだもの。

 実際、この本の内容を全て文章におこすと、
30ページくらいで事足りるんじゃなかろうか。
だから「薄いよ!」という感想になる。

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 じゃ、何がすごいのか、
そもそもなんで買ったのか、だけど。

 世の中には本を読むのが苦痛だという人がたくさんいるのね。

 そういう人たちにとっては、
「コミカライズされている」ということで
ものすごく情報が入ってきやすくなってるんだ。

 昔でいう、「学習マンガ」みたいなもんだな。
(〇〇のひみつ、シリーズ)

 若手薬剤師の勉強用に、購入してみた。
実際に読ませてみても、油沼さんの漫画は「読みやすい」という意見が多い。
まずは読んでくれなくちゃ始まらない訳だから、
「読みやすい」というのは圧倒的なアドバンテージになるんだ。

 いや、薬剤師は日々勉強が必要なんだから、
活字嫌いとかありえんでしょ、って思うけど、
実際に本読まない薬剤師が山ほどいる以上、
こういうアプローチも有用だと思う。

 なので、後輩に貸すために買った、という訳。

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 だいたい、油沼さんに限らず、薬剤師の出てくる漫画って、
私の評価は周りよりも低い。何が面白いのかわからん、とか。
ほとんど漫画読まないからだろうけどさ。

 でも、コミックもアニメも日本の文化であるわけだから、
情報の伝え方としては、素晴らしいんだよね。
あとは、本来のターゲット層に届けばいいんだけど。

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 最後にエッセイから。

風と共にゆとりぬ」(朝井リョウ)

 朝井さんは平成生まれ初の直木賞作家だけど、
デビュー作「桐島、部活やめるってよ」という作品の
(タイトルの)インパクト、知名度の方が大きい、という。

 そんな朝井さんのエッセイ集である。

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 これが、「めちゃくちゃ面白い」
「読んで得るもの、特になし」

 帯にそう書いてあるんだが、実際その通り。

 エッセイでこの人以上に面白い人っているのか?
そもそも、エッセイをそんなに読まないからわからないけど、
朝井さんに匹敵するのって、
さくらももこさんとか、三浦しをんさんくらいじゃないかな。

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 一番やばいのは、「肛門記」
痔(それも痔ろう)の闘病記である。
私はあまり縁がないけれども、これは大変だと思う。

 大変なのに、笑ってしまう。w
そこが、朝井さんの力量なんだろうな。
よくこんなの書けるな、と尊敬するわ。

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 実は、読んだのは初めてではない。
でも、何度読んでも面白いし笑ってしまう。

私にとってこの本は「笑いたい時に読む本」だ。

 再読にも色々あるんだけど、
私は、気分によって再読する本を選ぶことがある。

「気持ちを上げたい時に読む本」とか、
「泣きたい時に読む本」とか、
「気持ちを静めるために読む本」みたいなのがある。

 こういう時、「事前にどんな本か分かっている」というのは大きい。
ハズレをつかむことがないんだから。

 それでいて、何度読んでも新しい発見があったりする。
再読も、読書の醍醐味の一つなんだよね。
常に新しい知識ばかりを求めている訳ではない。

 ま、たくさん読んでるから、読んだ内容を忘れてしまう、ってこともあるんだけど。

 

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