読書記録 2022.2
2022年2月の読書記録。
2022.2の読書まとめ(読書メーター)
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2月は34冊読了。
小説(新規)17冊、小説(再読)5冊。
学術/ビジネス 10冊、エッセイ/その他 2冊。
年始に予約したコロナ関連本がまとめて来たので、
コロナに関する本が多かった。
3冊紹介。フィクションから。
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オオルリ流星群(伊予原新)
昨年「八月の銀の雪」が本屋大賞にノミネートされた、伊予原さんの新作。
読書メーターでデジタルプルーフ(発売前に読ませてくれるサンプル)に当選した。
20年以上前、高校の文化祭でオオルリのタペストリーを作った高校生たちが、
45歳になって、地方の天文台を手作りする。
すでに中年と言ってよい年齢だけど、昔の、高校生の文化祭のノリで
多くの友人たちの手を借りながら天文台を作り上げていく。
作中に「45歳定年説」というのが出てくる。
セカンドキャリアを考えると、45歳くらいで一度仕事を変えた方がよい、
という話。
現役で働くのを65歳くらいまで、と考えるなら、
45歳ってちょうど半分くらいになるんだ。
50歳すぎてしまうと、新しいことを始めるのは勇気がいるし。
また、仕事自体を変えるのではなくて、仕事のやり方を変えるのもいいかも。
全体としては、青春モノであり、天体モノでもあるんだけれども、
私にはもう一つ興味深いところがあって、
主人公(の一人)は、地元で薬局をやってる薬剤師。
大手のドラッグストアチェーンが進出してきている中、
どうやって生き残っていくか、という話もあったりする。
まぁ、実際は天文台にかこつけて、なかなかそっちは進まないんだけれども、
天文台の仕事を手伝ったからこそ、新たに一歩を踏み出せるのかも知れない。
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私は、ちょうど45歳になったばかりの薬剤師だったりする。
これ、私のために書かれた本じゃないのかな?ってくらい刺さった。
今年はちょっとどころではなく忙しいけど、
セカンドキャリアに向けて、何か動き出せればいいな、と思った。
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次、学術系。
保健所の「コロナ戦記」(関なおみ)
今月はコロナに関する本を色々読んだけど、
今、一番大変なのは保健所じゃないかな、と思った。
この本は、東京の保健所(と、都庁の感染症対策課長)として
第一線で働き続けた関さんの、コロナとの戦いの記録。
新型コロナ発生から、昨年の9月(第5波)まで。
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わかってはいたけれど、やっぱり大変だった。
「戦記」とあるけれども、保健所は最前線の「戦場」だ。
傷ついて倒れていく仲間もたくさんいた。
そりゃそうだよ。
もともと、日本の感染症対策は、
新型コロナのように1日に数万人も感染者が出るような
事態を、全く想定していなかった。
じゃぁ、どうしたか?
状況に応じて、無理やり組織を運営し続けた。
っつーか、それしか方法がなかった、ともいえる。
「できない」なんて言わせてくれない。
「やるしかない」状況だったから。
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読んでて思ったのが、
「保健所は、ひたすら、紙と電話とFAX」
ここを効率化できれば、もっと楽なのに。
もちろん、それがわからない訳はないが、
口で言うほど簡単な話ではないんだ、これ。
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問い合わせをかけてくる市民って、
たぶん、高齢者が多いんじゃないかな、と思った。
それじゃ、デジタル化なんて対応できんよね。
実は、医療機関もいまだにFAXが現役のところが多い。
医療機関同士のやりとりも、メールよりも電話とFAXなんだよ。
特に、高齢の医師がやっている診療所なんかだと、
デジタルに対応できない人たちが多いのかも。
つまり、保健所がどうにかして業務をデジタル化したくても、
それについていけない市民や医療機関が山ほどあるんだ。
で、お役所はそういう人切り捨てちゃいけないよね。
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ずっと問題になっている、「2類」「5類」問題。
保健所としては業務を軽減して欲しいから、
そりゃ5類の方が望ましい。
っつーか、入院調整とか、それって保健所の仕事かよ?
ってのが関さんの言い分。
医療機関側は、入院調整なんか面倒でできっこないから、
保健所にやってもらいたい。だから、2類相当の方がよい。
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いつまで感染者数を数え続けるんだろうね?必要?
ここまで増えてしまうと、もはや意味は薄くなっていると思う。
感染状況を確認するだけなら、他の方法も取れるだろうに。
じゃぁ、なぜ数え続けるのか?
そりゃ、世界中で数え続けているから、としか。
もう、どっかで「みんな、そろそろ数えるのやめません?」って
言ってくれないかな?
日本が率先してやめたら、
またゾロ、文句言う人がたくさん出てくる訳で。(苦笑)
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みんな(市民も病院も政治家も)保健所に頼り過ぎ。
保健所が、本来やらなきゃいけない業務もあるっていうのに。
でも、やらないという選択肢はないから、
バタバタ倒れてもやらざるを得ない。
本気で、負担軽減を考えた方がよいよね。
今回の第6波なんか、保健所は完全に沈黙した(壊滅した)し。
落ち着いたら、熱さを忘れる前に本気で考えようよ。
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最後、その他。
「日本人のための議論と対話の教科書」(倉本圭造)
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インターネット上では、色々な議論があるけれども、
議論のための議論になっているものがほとんど。
いかにして、相手を論破するか、罵倒するか、
しか考えていないものが多い。
いや、それって議論する意味あるの??
対立した意見の中から、互いにより高位に上がる。
高め合っていくのが、よい議論なんじゃないの?
お互いに隙を見せないように罵り合っていたら、
本来、到達できたであろう妥協点よりも、
かなり低いところまでしか届かない。
それは、お互いのためにならないよね?
もっと丁寧に対話しましょうよ、という話。
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別に、目新しい説じゃないよ。
私は、これ読んでヘーゲルの弁証法やん、って思った。
「テーゼ」に「アンチテーゼ」をぶつけて、
より高位な「ジンテーゼ」を導く。
相手を叩き潰すんじゃなくてさ、
お互いの譲れないところ、いいところを取って、
もっといいものを作ろうよ。
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この本の素晴らしいところは、そういう昔からある対話法を、
非常に説得力のある凡例を用いて説明しているところ。
すごい、わかりやすいんだ。
たぶん、「そうそう、これを言って欲しかった!」って、
両方の陣営が声を上げる、そういう話だと思う。
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21世紀に入ってから、世界の分断が進んでいる。
特に、ネットの世界では、「ネトウヨ」と「パヨク」の争い?
倉本さんは、そういう現実的でない極論を言う人は、
「放置」しようよ、と。
で、どちらの陣営にも「極論にはついていけねー」って人は
大勢いるから、そういう人たちだけで丁寧に対話して、
いいものを作っていこうよ、と言っているようだ。
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まぁ、岸田総理の扱い方とかは、「ほんまかいな?」って
ところがあるけど、流れとしてわからなくはない。
あと、個人的にはこの人もほぼ同年代なので、
「ジョジョ」のネタだったり、「スラムダンク」のネタが出てくると、
「ああ、同世代なんだな」と思ってにやけてしまう。w
40代半ば。
そろそろ、頭の固い高齢者には奥に引っ込んでいただいてさ、
うちら世代が丁寧に対話して、よりよい世界を作っていけたらいいんじゃない?
って感じかな。
欧米諸国に比べれば、日本の分断はまだマシな方だし。
分断を防いで、対話でいい社会を作っていく実績ができれば、
国際社会における、日本の地位も向上するんじゃないのかな。
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倉本さんは、twitterでもフォローしてるけど、
ウクライナ情勢に関して言えば、
「西側だけの言い分だけでなく、ロシアの事情も理解しなければいけない」
とは言いながら、
「つっても、軍事侵攻はダメ。ダメなものはダメと言わないと」
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この、二つの意見を両方同時にもたないといけないんだけど
ネットみてても、片方しか理解できない人が多いような気がするな。
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