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読書記録 2023.8

2023.8の読書まとめ(読書メーター)

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8月は30冊読了。

小説(新規)12冊、小説(再読)7冊
学術/ビジネス 8冊、エッセイ/その他 3冊

何とか30冊に届いたけど、
今月はあまり読書がすすまなかった。
学術系の本が難解だったり
合わなかったりしたからなぁ。

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 今月の3冊。

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 まずは小説
猫を処方いたします」(石田祥)

 この作者さんの本は初めて。
なのに、図書館で借りることもなく、いきなり購入。
初物をいきなり買うなんて、
過去にちょっと記憶ないなぁ。

 なぜか?
文庫本だというのもあるが、
表紙の猫にやられた。

 処方猫ってなにね?w

いやぁ、これはもうタイトルだけで売れるの確定。
中身も、まぁ予想通り。
アイデアの勝利としか言いようがないわ。

 普通にはたどりつけない心の病院。
たどりつけた患者には、怪しげな医師が、
猫を処方してくれる。

「大丈夫ですよ、
だいたいの悩みは
猫で治りますから

そりゃそうだ、としか言いようがない。

 患者さんは、先生が処方した猫と、
注意事項、餌などをもらって帰宅する。
処方期間は1週間くらいかなぁ。
 猫と暮らしているうちに、
(なぜか)悩みが解決してしまう。w

 アニマルセラピー?そんな生ぬるいもんじゃないよ。
猫様の力を侮ることなかれ。

 別に処方されたといっても、世話をするだけ。
猫を吸うとか、そういう訳ではない。(当たり前)

 もちろん、少しはファンタジー入ってる。
まだまだ謎も多いし、これは続きそうだなぁ。
そしてまた、買ってしまうんだろうか。
くそ、まんまと猫に買わされてしまった。

 私の好きなキーワード。
「猫」と「処方」が両方とも入っているんだから、
そりゃ買うしかないでしょ。


 次、学術系
因果推論の科学」(ジューディア・パール)

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 分厚くて難解。難しい本だった。原題は「The book of why」
今までの統計学では、相関関係はわかっても、因果関係はわからなかった。
相関関係と因果関係は異なる」のが、統計学の基本。

 で、相関関係を求める計算方法とかはいろいろあるんだけど、
因果関係がどうなっているのか、を求める計算方法はなかった。

 そこを何とかしよう、と著者が新しい学問を始めた。
それが因果推論、ということかな。
これ、一応一般向けの本なんだけど、きわめて難解だった。

 まず、世の中で最も確実なテストは、
RCTだ。ランダム化比較試験。
これは、医薬品の開発には欠かせない。

 でも、恐ろしく時間と費用がかかるし、
倫理的にできない場合もある。
例えば、たばこと肺がんの関係を調べるのに、
ランダムに喫煙させる、とか無理がある。

 たばこと肺がんの関係が認められるのに、
相当な時間がかかった理由の一つでもある。

 で、この著者らの新しい因果推論を使えば、
RCTできないような事象に関しても、
因果関係を推定できるようになる。

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 ようは、交絡因子を適正に処理していけばいいのだが、
これが難しい。修正してはいけない因子もあったりする。

 で、その辺はAIに判断ができない。
コンピューターは計算できるだけで、意味はわからないから。
因果関係がわからないんだな。

 最終的にストロングAIを作るためには、
この部分の因果推論を計算式で表す必要がある。
まだまだ非常に難しいが。
そうでなければ、人間のように判断はできないだろう。

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 データはどれだけ集めてもデータであって、
それをうまく活用するためには、因果関係を踏まえた知恵が必要なのね。
でも、その知恵をコンピューターに教えるのが極めて難しい。

 ここを突破できれば、一気にブレイクスルーできそうなんだが。
科学全体が、一段階上のレベルに上がるんじゃないだろうか。

 でも、それって人類に可能なのかな?と思うが。(苦笑)

 とにかく、難しいけど学問的に非常に重要、
というのだけわかった。

できれば読んでみてほしい。

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 あと、パラドックスの例が面白かったな。
知ってるのもあったけど、人間は勝手に因果関係を読み取ってしまう生き物だから。

 一つ紹介すると、
異性の容姿と性格に負の相関が見えることの説明が面白かった。
2枚のコインがあって、どちらも裏なら記録しない。
そうでないなら記録すると、およそ2/3の確率で表と裏の組み合わせになり、
負の相関が見えてくる。片方が表なら、もう一つは裏の確率高くない?って。
いや、両方とも裏を記録してないから当たり前なんだが。
これは、喩え。

異性の容姿と性格についても、両方悪い人(どちらも裏)を眼中にいれないから、
容姿と性格に負の相関が見えてしまう、らしい。
基本的には、容姿と性格には何の相関関係もないはずだけど。
容姿も性格も悪い人をサンプルから排除してしまうと、(人は無意識にそうする)
どっちかだけいい人が多くなってしまうのね。

データの観察の仕方によって、いろんなパラドックス、相関がみえてしまうんだ。

 難しいけど面白い。でも難しい。

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 最後。

くもをさがす」(西加奈子)

 西さんの本は全部読んでる。
西さんは直木賞作家で、私とほぼ同年代。

最新作は、小説ではなくてノンフィクション

 西さん、いつの間にか結婚して子供がうまれてて、
バンクーバーに住んでいるらしい。
そんな西さんが、乳がんになった。
この本は、西さんの治療の記録である。

「カナダで、がんになった」
「あなたに、これを読んでほしいと思った」

 あえて、「闘病」という言葉は使っていない。
あくまで治療。闘いではない、と。

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 西さんの作品をたくさん読んでるので、
ノンフィクションであっても、
西さんの小説の一シーンが浮かび上がってくる。
ああ、このシーンはこの本に似てる、とか。
この表現は、西さんならでは、とか。

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 ただ、薬剤師として読むならば、
西さんのがん(トリプルネガティブ乳がん)の
治療の記録は、勉強にもなる。

 そして、カナダの医療事情もよくわかる。
最終的に手術するんだけどね。。

 乳がんの手術、日帰り。

 ドレーンついたまま退院。
薬局でタイレノールもらって帰れ。

 タイレノール(アセトアミノフェン)が
万能すぎる。w

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 バンクーバーの町のいいとこ、とか。
カナダのいいところ。よくないところ。
そういうのもたくさん書いてる。

 ただね、西さんね。
カナダ人のセリフ、全部関西弁で訳してるのよ。
これが面白い。いかにも西加奈子って感じで。w

 そして、哲学的な問いも多い。
この辺は「i」を思い出したなぁ。
過去のエッセイにもつながるところあるし。

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 西さんの小説としての最高峰は、
「サラバ!」だと思っているけれども、
この「くもをさがす」は、
西さんの著作のなかで「サラバ!」に匹敵する。

 西さんファンのみならず、
がんサバイバーの人にも読んでほしいし、
今からがんの治療を受けるひとにも読んでほしい。
そして、医療従事者にも読んでもらいたい。

がんの治療を受ける人の気持ちもわかるし、
さらに、がんの治療の勉強までできてしまう。

 これ、間違いなく今年のベストだわ。
「読めよ、薬剤師」のノンフィクション枠確定だ。

 これは本当に、読んで。

 そして気に入ったら、
西さんのほかの作品も読んでみて。
すごいから。

 

 

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