読書記録 2023.11
2023.11の読書まとめ(読書メーター)
.
11月は30冊読了。
小説(新規)15冊、小説(再読)4冊
学術/ビジネス 9冊、エッセイ/その他 2冊
何冊か読みにくい本があり、冊数は伸びなかった。
読みにくい本でも最後まで読むのが私の流儀。
途中でほっぽり出して読まないことはほとんどない。
.
今月の3冊。
.
まずは小説
「あしたの名医:伊豆中周産期センター」(藤ノ木優)
.
珍しく、タイトルだけで新刊で購入したけど、
予想外に面白かった。(失礼)
医療系の小説は、エンタメとして面白いことは当たり前として、
それでいて現在の医療について知ることができて、
勉強にもなる。
この作品の場合、それに加えて
「伊豆の食べ物」の魅力満載、という
プラスアルファもついてくる。w
.
作者の藤ノ木さんは初めて知ったけど、
現役の産婦人科医らしい。
これ読んで、産婦人科を目指す医師が増えたらいいのに。
.
主人公は、東京の大学病院から、伊豆に出向させられる。
東京では考えられないような勤務体系。
(休日は、自分の予定を提出のこと)
時代遅れとしか思えない「教授ルール」
そもそもが、自分のやりたい医療とは違うけれども、
そんな中でもまれながらも、産婦人科の臨床経験をつみ、
ひよっこながら成長していく、という物語。
.
地方の産科医療は、厳しい。
本当に綱渡りの状態で回しているようだ。
伊豆中にしても、救急車を断る、という選択肢は最初からない。
すべて受け入れるしかないから、勤務体系がえぐいことになる。
こんなので医師の働き方改革とかどうやっていくんだろうね?
ちゃんと休みをとれるようにしようとするならば、
お産のできる病院を集約して、
一つの病院あたりの医師の数を増やすしかない。
でも、そうすると田舎の病院から産科が消える、とかで
反対運動が起きる、といった流れだったような。
実際問題、田舎で産婦人科医一人でやると、
「24時間365日勤務」に近い状態になるし、
実際にそれで回していた病院もあるんだけど、
令和の時代にそれは無理でしょ?
どうするのかな。
.
次、学術系
「EXTRALIFE なぜ100年間で寿命が54歳も伸びたのか」(スティーブジョンソン)
.
タイトルだけで、どんな内容か想像つくよね。
実際、そういう話。
19世紀ごろまでは、平均寿命は30歳程度だったけど、
今は80歳くらいになっている。
その結果として、人口爆発しているんだけど。
じゃぁ、その要因はなに?
.
平均寿命が短かったのは、
乳幼児死亡率が高かったから。これに尽きる。
昔の平均寿命は30歳って言っても、
15歳くらいまで生きられた人は、その後、結構長生きできる。
.
乳幼児死亡率を下げたのは、
なんといっても、「ワクチン」
次に、下水道などの「公衆衛生」
また、医療が未発達な地域でも使いやすい「経口補水液」
子供が感染症で死ななくなったから、平均寿命が延びた。
もちろんワクチンだけど、感染症を抑えるための公衆衛生。
そして、下痢症状を手っ取り早く改善する「経口補水液」
この辺は、億単位で人の命を救ってる。
.
医学の発達ももちろん要因ではあるけれども、
昔、18~19世紀くらいだと、
医療が介入する方が死亡率が高かった時代もあった。
今からみたら明らかにやばい治療をしているから。
医学でのブレイクスルーは、
「ちゃんと効果の判定をできる臨床試験」
RCTの発明。
今から考えれば当たり前の話なんだけど、
これがでてきたのって20世紀の話なんだよ・・・。
対照実験大事。
.
そんな世界の平均寿命だけど、
ここ2年で連続して下がっている。
新型コロナの影響の凄まじさ。
1910年代のスペイン風邪に匹敵する
100年に1度のパンデミックだったんだなぁ。
.
最後。
「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」(尾身茂)
.
日本の新型コロナ対策、分科会会長の尾身さんの記録。
尾身さんは、この夏に分科会会長から退いた。
立場はいろいろ変わったけれども、
常に日本のコロナ対策の中心にいた。
日本のコロナ対策はどうだったのか、の記録。
.
尾身さんはじめ専門家は、最初から、
「歴史の審判に耐えられるか?」を考えて行動していた。
そのため、後世からみて検証できるように資料を残している。
この本は、その資料集でもあるのかな。
次々と変わる事態に、尾身さんや専門家がどう考えて、
どのように対応したのか。
.
日本は、コロナによる被害をかなり抑えた国の一つ。
欧米に比べると、死者数が異様に低い。
ただ、経済面ではどうだったのか?と言われると難しい。
.
最終的には、医学だけでは語れない価値観の問題になる。
今回は、専門家が「前のめり」で前に出すぎてしまったが、
逆に言うと政治家が前に出たがらなかったからだろう。
本来は、専門家の提言を受けて、国民の信託を得ている
政治家が決断を下すべきなんだ。
.
5類移行にしてもそういう話。
大した病気ではなくなったから5類に、という訳ではないと思う。
コロナを過去にするために、目をつぶってやった面が大きい。
夏から秋にかけての9波。
ほとんど報道されていないが、おそらく第8波と同等の死者数が出ていると思う。
統計として正確にカウントしていないからわからないけど
(あとで、超過死亡数として確認できるが、数ヵ月のタイムラグがある)
.
コロナの2020年から2023年。
もっとも死者数が多い年は?
間違いなく、2023年。
今年だ。
8波は過去最高の死者数を出しているし、
9波もそれに匹敵するくらいなんだから。
それでも、5類にしたんだよ。
コロナで死ぬことをあきらめて、見ないことにした。
それは価値観の問題だ。
日本国民がそうとわかってやったのならね。
たぶん、ほとんどの人はわかってなかったと思うけど。
.
願わくば、これで終わりにしないでほしい。
喉元過ぎれば熱さを忘れる、ではだめ。
次のパンデミックに備えるために、
しっかり検証して欲しい。
何はともあれ、尾身さん、お疲れさまでした。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 読書記録 2025.4(2025.05.03)
- 読書記録 2025.3(2025.04.08)
- 読書記録 2025.2(2025.03.08)
- 読書記録 2025.1(2025.02.02)
- 2024年読書まとめ(2025.01.03)
コメント