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2024年2月

読書記録 2024.1

2024.1の読書まとめ(読書メーター

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1月は30冊読了。

小説(新規)13冊、小説(再読)6冊
学術/ビジネス 10冊、その他 1冊

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 #読めよ薬剤師2023で取り上げられた本を
図書館で探して読んでいるので、
1月は学術系の割合が大きくなる。

 冬休み期間に結構な冊数を読んでいたけど、
終盤、体調を崩して失速。
終わってみれば月間30冊だった。

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 今月の3冊

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 小説

幽世の薬剤師」(紺野天龍)

 記憶があいまいだけど、
確か、#読めよ薬剤師2022、で紹介されていたと思う。
気になって予約していたら、回ってくるのに1年かかった。

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 働きすぎ?の漢方薬剤師(病院勤務)が、
怪異のおこる異世界(江戸時代くらいの日本?)に
迷い込み、トラブルを解決していくお話。

 ぶっちゃけ、和風「異世界薬局」

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 「異世界薬局」では、神力や魔法があったけれども、
「幽世」では、主人公は普通の薬剤師。
ただ、ヒロイン?の巫女が、怪異をお祓いする力をもつ。

 でも、そんなに強い印象はないな。

 世界観がかなり特殊で、
「人々が信じているような怪異が発生する」
という、因果関係を逆転させたようなルールがあって、
その怪異を解決していくようなお話、かな。

 漢方薬を作るシーンもあるけれども、
話の本題にはあまりかかわってこない。
おまけ、っぽい感じ。

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 正直、1巻はあまり刺さらなかったけど、
2巻を読んでみて、方向性を理解した。

 これ、医療ミステリーだ。

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 ある症状や現象があって、
処方でどう変わるか、
また、幽世の世界のルール(根源怪異とか感染怪異とか)
から、主人公が謎を解き明かしていく。

 この主人公、漢方の知識というよりも、
推理力の方がすごい。

漢方薬剤師は、ある意味で体で起こっていることを
「推理」して薬を考えていくので、
これも薬剤師の力、といえなくもないんだけど。

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 なんか、主人公の愛されっぷりが、
「異世界薬局」に似てるなぁ、と思ってしまった。
ある程度の恋愛要素は必要なのかね?
元の世界ではとてももてるとは思えないんだが。w

 個人的には、その辺割とどうでもよくて、
もっと論理や推理に振り切ってもいいと思うんだけど、
そうするとあまり売れないんだろうなぁ。

 結構、続編も続いているみたいなので読んでいく。

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 次、学術系。

世界一やさしい依存症入門」(松本俊彦)

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 いや、#読めよ薬剤師2023からと違うんかい!
薬剤師のみなさん、勉強家すぎて、
ちょっとついていけないのよ。w

 その点、この本はものすごくわかりやすい。
なんせ、対象読者が「中学生」だから。
たぶん、小学生高学年でも読めると思う。

 こういう「わかりやすさ」って大事なのよ。

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 ニュースでも、市販医薬品のオーバードーズの問題が
取り上げられることも増えてきた。
 もちろん、市販薬の話もあるけれども、
アルコール、たばこ、自傷行為、ゲーム、などなど。
依存症っていろいろあるよね。

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 どの依存症に対しても、アプローチの方向性は同じで、
「ダメ、絶対。やめなさい!」
って言っても、ダメなんだわ。
それじゃ解決しない。

「なぜ依存症になってしまうのか?」
にフォーカスをあてて、そこを解決しないと。

 著者が言うには、まずは
「社会とのつながりをもつこと」
「誰かに相談すること」
 が大事。

で、相談された人、友達、親、先生は、
一方的に否定しちゃダメ。
それすると、孤立しちゃって悪循環にハマる。

 依存症になる一番の原因は、
「孤独」なんじゃないかなぁ?って思った。

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 日本では、違法薬物の使用は犯罪だ。
芸能人とかが、たまに逮捕されて、
報道陣の前で謝罪会見とか、あるよね。

 ああやって、みんなでぼこぼこに叩くことって、
本人の依存症の解決には全く役に立たないどころか、
明らかに有害である。

 だって、孤立しちゃうでしょ?
そうすると、また依存にハマってしまうよ。

「ダメ、絶対」という薬物対策は、全然ダメだった。
薬物にハマる環境自体を何とかしないといけないのさ。

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 最後も学術系。

安楽死が合法の国で起こっていること」(児玉真美)

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 正直、この本は賛否両論あると思う。
諸外国の状況から「すべり坂」の問題点はわかるんだけど、
この人自体が障碍者のお子様をもつ当事者なので、
その視点からの意見が、主観的すぎるのね。

 でも、そう思う人もいる、ってのは大事なことだし、
ネット上の論調だと安楽死賛成の方が圧倒的多数だから、
「いや、そうじゃないんだよ」という反対意見は、
もっととりあげられていいと思う。

 もっとも、児玉さん自身は
安楽死反対派、という訳ではない(と自分で言っている)が。

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 言葉の問題から。
「尊厳死」と「安楽死」は違う。
日本では、「積極的な治療を行わない」という
尊厳死は認められている。

 安楽死は、積極的に安らかに命を終わらせる、
という行為で、日本ではまだ認められていない。

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 この辺、フィクションとしては、
南杏子さんの「いのちの停車場」で取り上げられている。

「今後、回復の望みは皆無であって、
 耐え難い痛みが続くだけの状況で、
 無益な治療を続けるのは、患者を苦しめるだけ」

 という状況であれば、安楽死は肯定されるのでは?
という問いかけだ。

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 おそらく、児玉さんもこの状況であれば、
安楽死を否定されることはないと思うんだが。

 じゃぁ、何が問題かっていうと、
最初はそういう限られた条件でのみ認められていた安楽死が、
運用していくうちにどんどんハードルが下がっていくこと。
これを「すべり坂」と呼んでいる。

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 いま、高齢者医療とかで医療費の無駄使いが言われてるよね?
あれって、少なくとも私の世代では共感する人が多いと思う。

 でもさ、社会の要請として考えてみると、
「今後も医療費を莫大に使う人」に対してはさ、
安楽死してもらった方が、社会の負担は楽」なのよ。
これはもう、絶対的にそうだよね。

 莫大な費用と手間をかけて、生活を保護してあげて、
ヘルパーを手配して、医療費もかけて・・・。

 経済的な面だけで見るとさ、
「さっさと死を選んでくれた方が、社会のため」
になってしまう。

 だから、社会の側が簡単に「安楽死」を提案してしまいがち。
そして、どんどん安楽死のハードルが下がっていく。
これが「すべり坂」

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 念のため。
これは、私がこの本をそう読んだ、というだけで、
児玉さんの意見とは違うかも知れない。
(少なくとも、ここまで直接的には書いてない)

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 私は、これがキリスト教社会でおこっていることに
びっくりしたんだけど。
いや、宗教は何をしてるのさ?と。

 この辺の話は、社会科学というよりも、
倫理や宗教の問題じゃないの?
ようは、やり方はともかく、
「自殺を肯定する」社会でいいのか?と。

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 これが暴走すると、ナチスみたいになるよね?
「ユダヤ人は生きているだけで罪」
として、強制収容所におくって虐殺したんでしょ。

たとえば、同じことが障碍者相手におこらない、と
言えるかい?
実際、そういう妄想にとりつかれた事件もあったし。

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 積極的安楽死を支持するか、しないかは別として、
こういう視点もあるんだよ、というところで
読んでみてほしい。

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 おまけ。

#読めよ薬剤師2023、で紹介された
名郷先生の「いずれくる死にそなえない」も、
この問題とかなり関わってくる。

 ただ、名郷先生は明確に安楽死を否定してるんだが、
その根拠が薄弱なのね。(多分、倫理面だと思う)

 どちらにしても、医療と倫理、宗教のからむ話なので、
合わせて読んでほしいな。

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 1月は学術系でよい本が多すぎて、絞るのが難しかった。
#読めよ薬剤師2023、で紹介された本は
他にもいい本がたくさんあるんだけどね。

 

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