先日の記事の続きになる。
「機能性表示食品の制度をもう少し詳しく」
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-1960.html
実際に、機能性表示食品の評価をやってみよう。
という流れになった。
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まず、情報元から。これは、消費者庁のページでよい。
「機能性表示食品に関する情報」(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index23.html
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さらに、届け出内容詳細から、提出資料を全部見られる。
今回は、その中でも機能性情報に関する公開情報のみ確認した。
すべての製品について、最終商品を用いた試験による論文が
ついてくる訳ではない。というか、付いている方が少ない。
最終商品を用いた臨床試験が行われていない製品については、
その商品の有効成分の含まれる論文を紹介するだけでよい、となっている。
(その分、表示の表現が微妙に変わることになるが。)
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実際のところ、これ、論文をつけてもらわない方が評価は楽かも。
臨床試験の論文を見てみたけれども、日本語だとまだマシなんだが、
英語の論文となると、読み込むのにかなりの時間が必要。
英語論文を読みなれている人ならともかく、そうでない私のような
人間なら、読み込むのに1時間では利かないだろう。
ただ、企業の立場からみると、あえて英語論文をぶつけておく方が、
消費者の目を騙しやすい、という側面はあるかも知れない。(苦笑)
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有効成分の含まれる論文を紹介するパターンであれば、評価は楽だ。
ただし、「元論文を検証しない」のであれば。
これ、元の論文を検証する手間をかけると、
一介の薬剤師では不可能、と言い切っていいだろう。
ようは、「この論文による結果はこうなっている」と、
機能性情報に書かれていても、それが信用できるのか、という話。
ここに不正を紛れ込まされると、正直お手上げに近い。
例えば、「効果は極めて限定的であった」みたいな論文なのに、
メーカーが「効果はあった」と評価していた場合。
だって、その論文を読むためには、どうにかして論文本文を手に入れる
必要があるんだけど……、これが有料だったりするんだが。(苦笑)
そんなとこにお金かけることができる薬剤師はいないだろう。
無料だったにしても、当然、論文を読み込む時間が増える訳で。
それも一本の論文ではなく、複数になってくるともう無理。
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そのレベルでの不正をやられると、チェックなんて不可能に近い。
なるほど、これは厄介だわ。
そのレベルのチェックをしないのであれば、評価自体はそんなに難しくない。
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実際に、一つやってみよう。
実際に知っている成分の方がやりやすいだろう、ということで、
「モノグルコシルヘスペリジン」を含んでいるファンケルの「健脂サポート」。
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/A6-kinou.pdf
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表示は、以下の通り。
「本品には、モノグルコシルヘスペリジンが含まれます。
中性脂肪を減らす作用のあるモノグルコシルヘスペリジンは、
中性脂肪が高めの方の健康に役立つことが報告されています。」
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※注意。今回の評価は、あくまで一個人の私の感想です。
評価は、「モノグルコシルヘスペリジン」と、ファルケンさんの提出した資料
についての感想であり、最終製品の「健脂サポート」を否定するものでは
ないので、ご了承ください。
で、この商品は機能性関与成分に関する研究レビュー。
モノグルコシルヘスペリジンの摂取による中性脂肪の変化についての
システマティックレビューである。
採用する論文は、「RCT、ランダム化クロスオーバー試験、準ランダム化比較試験、
非ランダム化比較試験、コントロール群のない介入試験」となっている。
つまり、ランダム化されていない試験(それどころかコントロールがないって。w)
を含んでいる。質としては、よくはない。悪い、といってもいいかも。
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結果としては、適格基準に合致した論文は4編。(たった?)
バイアスリスクが中、となったRCTは、血中中性脂肪低下効果を示した。
バイアスリスクが高い、コントロールのない介入試験では、
「正常域での血中中性脂肪値を維持」した。
うち1編では、有意な低下は認められなかった。
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たった4本しか論文が残らないのは、この機能性表示食品は、あくまで
「健康な人」を対象にするから。つまり、病気の人を対象にした試験は、
対象外になってしまうのである。
これも、ある種バイアスになっていると思うんだけどな。
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とりあえず、基本データを抑えておく方が楽なので、こういう時は
「健康食品の安全性・有効性情報」のサイトである。
https://hfnet.nih.go.jp/
ここの、「素材情報データベース」は非常に使える。
というか、ここで評価されているような素材であれば、もう文句なしに
機能性表示食品として成立する、といってもいいだろう。
逆に言うと、ここの評価は非常に厳しいってことでもある。
ちゃんとした雑誌に載るようなエビデンスでないと評価してくれないから。
ここで調べたところ、「ヘスペリジン」の評価は、普通か、やや低め。
(追記:ヘスペリジンと、モノグルコシルヘスペリジンは、同じ物質ではありません。
素材情報データベースに「ヘスペリジン」しかなかったため、代用しています。)
海外のRCT2件が触れられているが、全く効果がなかったという報告と、
炎症マーカーや総コレステロール値の低下は認められた、という報告。
ただ、どちらも病気の人を対象にした試験のため、
今回の研究レビューの対象外になるだろう。
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この研究レビューでは、論文は読めなかったけれども、
大雑把な結果が示されていた。それを見る限りでは、
確かにRCT2本のほうは中性脂肪が下がっている。有意差ありで。
対照のない介入試験の結果も、ある程度読めるけれども・・・
これ、本当に変化ないようにみえるな。(苦笑)
ところが、ここでファンケルさん、うまいこと言ってくる。
「正常な血中中性脂肪値を維持することに有効」だと。
ようは、正常な人を下げすぎることはなく、少し高めの人は下がるんだ!と。
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今回は、論文読まない縛りでやるけど、
ファンケルさんのレビュー読む限りでは、それ、詭弁にしか見えない。w
介入試験の数値見る限りでは、少し高めの人も下がってないよ。
まぁ、RCTでは下がってるみたいだからいいけどさ。
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さて、そろそろまとめに入ろう。
たった4本の論文のみのシステマティックレビュー。
しかも、うち2本はRCTどころか、対照すらない介入試験。
さらに、バイアスリスクも高く、質はあまりよくない。
(と、ファンケルさんが自己評価している)
その上、介入試験の方は、「有意差なし」と出てしまっている。
で、結論として、「中性脂肪を減らす」と言って・・・いいの??
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私の結論としては、「ま、ギリギリ、アリかな?」である。
あえて評価するなら、B-といったところか。
介入試験でネガティブな結果が出てしまっているけれども、
研究の質としては、RCTの方が上なんだから、RCTを信用すべきだろう。
いくらバイアスがあるっていってもRCTだし。
ただまぁ、自分で「バイアスがある」って言い切ってるとこもあるから、
正直、微妙なんだけど・・・。でもまぁ、根拠があると言っていいでしょう。
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気になるのは、「除外文献リスト」
あえて、「効果はありそうだったけど、病気の人対象だったから
泣く泣くはずしたんだよ」みたいな説明付きで載せてたんだけどね。
それ、恣意的に選んでないかい?
本来の評価とは関係のないところで、
「じつは効果があるっていう論文もあるんです!」ってやるのはねぇ。
だって、「ほとんど効果はなかった」って論文もあるんだよ。
そういう効果のなかった論文は、単純に「除外」しておいて、
効果のあった論文だけ「本当は除外だけど、紹介します」って
言ってるんじゃないのかな。
なんでこの文献をあえて紹介したのか、ファンケルさんに説明を求めたい。
うがった見方をするならば、そもそも「効果のあった」とされる文献だけを
集めて、効果がなかった文献は、適当に難癖つけて「除外」した可能性は
否定できないんじゃないのかな。
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でも、その辺を調べるのは、専門家じゃないと無理無理。
時間がいくらあっても足りないわ。
だって、1次スクリーニングだけで114件あって、こっから108件を
除外している。この「もれた」108件をチェックするなんて・・・
一介の薬剤師には不可能と言っていいでしょう。
つまり、市井の薬剤師の30分の調査では限界がある、ということ。
メーカーが本気で不正をやったら、見破る力はない。
その成分の専門家でないと無理じゃないかな。
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ただ、商品としての評価は、また別。
企業の出した「届出情報」の不正は完全には見抜けないにしても、
その他の情報から、それなりの評価は可能だと思う。
私は、(値段にもよるが)このファンケルさんの「健脂サポート」は
それほど悪い評価はしていない。
ただ、この評価って、薬剤師個人の考え方によるところが大きいかも。
つまり、客観的な評価ではないと思う。それでいいのか?
これはこれで、別の問題かな。
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今回は論文を読まなかったけれども、
論文を読んでみたらどんなもんなんだろう?
という訳で、この話はさらに続く。
明日は、「論文読まない縛り」を解除して、
機能性表示食品を評価してみる。
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